イギリスの世界遺産「マリタイム(海事都市)・グリニッジ」とは?グリニッジ天文台を含めて世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(1), (2), (4), (6)
登録年1997年

ロンドン南東部にあるグリニッジは、15世紀から19世紀末までイギリスの海の玄関口として発展した都市。中心部には旧王立海軍大学や17世紀に建造された旧王立天文台があり、ここにグリニッジ子午線(経度0度)が通っていたことでも有名です。

ここではマリタイム・グリニッジがなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、マリタイム・グリニッジについて詳しくなること間違いなし!

目次

マリタイム・グリニッジとは?グリニッジ天文台も世界遺産?

マリタイム・グリニッジ
画像素材:shutterstock

グリニッジは、ロンドンの南東部にあるテムズ川沿いにあるエリア。ここは英国王室の王宮があった場所で、17世紀には女王のためのクイーンズ・ハウスが建造。ここはイギリスの海の玄関口でもあり、大航海時代の名残が多く残る町です。

17世紀にはバロック様式の王立天文台が築かれ、ここで観測された恒星図をもとにイギリスの位置が定められました。やがて1884年には国際会議で、グリニッジ子午線(経度0度)が決まり、現在でもグリニッジが世界の基点となっています。そして、建築家イリゴー・ジョーンズが設計したクイーンズ・ハウスや建築家クリストファー・レンによる旧王立海軍学校など、グリニッジに残る建築物は17〜18世紀のイギリスの芸術と科学を象徴するもの。

登録されている主な構成遺産

グリニッジ天文台(旧王立天文台)

グリニッジ天文台(旧王立天文台)
画像素材:shutterstock

1675年に英国王チャールズ2世によって設立した王立天文台。グリニッジ・パークの丘の上に位置していて、バロック様式で建造されました。大航海時代において海難事故が多く、航海には正確な緯度と経度の計測が必要という事情もあり、航海術の発展は国家プロジェクトで進められたもの。

よって、ここで北極星の位置を計測し、恒星図を作り、イギリスの位置を定めました。やがてこの場所を中心としてグリニッジ子午線(経度0度)を設けたために、現在の「グリニッジ標準時」の基準ともなっています。

クイーンズ・ハウス

クイーンズ・ハウス
画像素材:shutterstock

王立海軍大学とグリニッジ・パークの間にある宮殿。1616〜1635年にかけて建築家イニゴー・ジョーンズの設計によって建造。これは当時のイタリアで流行した、ギリシアとローマの建築様式を取り入れたパッラーディオ様式で設計したもの。

しかし、17世紀に破壊されてしまいます。その後、宮殿は修復され、現在は博物館に。クイーンズ・ハウスは建築史においては、英国でのパッラーディオ様式の先駆け的存在として重要なもの。

旧王立海軍大学

旧王立海軍大学
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建築家クリストファー・レンの傑作でもあるのが旧王立海軍大学。かつてここには英国王の宮殿があったものの、17世紀後半に取り壊され、船員たちのための王立病院がクリストファー・レンの設計により建設されました。そして、1873年にはイギリス海軍の大学として利用されるようになります。

1998年以降は大学は閉鎖し、グリニッジ財団が管理。現在は一部はグリニッジ大学の公社として利用されていていたり、礼拝堂やペインテッド・ホールと呼ばれる美しい天井画が残るホールなどは一般公開されています。

マリタイム・グリニッジはどんな理由で世界遺産に登録されているの?

マリタイム・グリニッジ
画像素材:shutterstock

マリタイム・グリニッジが評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
グリニッジの建築物は、並外れた人類の創造物であるという点。

登録基準(ii)
グリニッジには、ヨーロッパの建築様式に触発され、イニゴー・ジョーンズやクリストファー・レンなど、偉大な建築家による作品が残り、ヨーロッパの建築の歴史が見られるということ。

登録基準(iv)
自然と調和しながら計画され、建造された宮殿や大学、公園などは、17〜18世紀の英国王室が主導的に進めていて影響力を与えていたということ。

登録基準(vi)
グリニッジの天文台により、天文学が発展し、やがてここがグリニッジ子午線(経度0度)となり、世界標準となったという点。

世界遺産マニアの結論と感想

グリニッジは大航海時代において重要な地でありました。特に英国王は大航海時代を制するために、航海術の発展のために天文台を築き、海軍のための病院や大学を設置するなど、それらが英国の芸術と科学の発展に繋がったという点で評価。そして、現在でも「グリニッジ子午線」が残っているというのもポイント。

ちなみに、現在の子午線は天文台内ではなく、東へ約102mほどずれています。1851年に当時の台長ジョージ・ビドル・エアリーが「エアリー子午線(グリニッジ子午線)」を定め、それが1884年に国際的に認められてしまったために長らくここが世界の基準となっていました。

しかし、グリニッジにあるエアリー子午線の位置は子午線より少しずれてていて、本当に正しい位置にある現在の子午線は天文台にはないのです。…つまり、天文台の子午線は本当の子午線ではないという悲しい事実(とはいえ、かなり近い位置にはあるのですが)。実際はズレてはいるものの、100m程度の誤差ではあるので、現在でもエアリー子午線と本当の子午線を含めて、通俗的に「グリニッジ子午線」とされていることが多いのです。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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