ブラジルの世界遺産「パンプーリャの近代建築群」とは?世界遺産マニアが解説

  • URLをコピーしました!
登録区分文化遺産
登録基準(1), (2), (4)
登録年2016年

ブラジル南東部のベロオリゾンテにある人造湖パンプリーリャ湖一帯は1940年代から始まった庭園都市プロジェクトの中心地でした。ここは首都ブラジリアを設計したオスカー・ニーマイヤーが先鋭的な芸術家とともに設計し、教会や美術館、文化施設など、建築と彫刻、絵画などを融合させたコンクリートの建造物で、ブラジルの気候や自然環境に合わせた近代建築が見られます。

ここではパンプーリャの近代建築群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、パンプーリャの近代建築群について詳しくなること間違いなし!

目次

パンプーリャの近代建築群とは?

パンプーリャの近代建築群
画像素材:shutterstock

ブラジルの南東部にあるミナスジェライス州の州都べオリゾンテ。ここは標高約800mの高原地帯に建造され、1940年代に人造湖パンプリーリャ湖一帯は庭園都市(庭園の環境がある都市)として設計され、世界遺産としてはその時期に建造された4つの建造物が登録。

これらは後に首都ブラジリアを設計することになる建築家オスカー・ニーマイヤーの初期作品で、彼はさまざまな芸術家たちを集め、コンクリート建築の可能性を示し、陶芸や彫刻などの造形芸術を合わせたという大胆なデザインが見られる建築物でした。さらに建築物には、造園家のロバート・ブール・マルクスによって、湖と合わせて自然が映えるように庭園がデザインされ、自然景観との繋がりも見られます。

20世紀最初の数十年間に発展した近代建築の原則から開放され、ブラジルの伝統や気候、自然環境に適用されるように建造され、これらは芸術家たちによって、造形芸術と建築が融合し、文化的景観として存在しています。世界遺産として登録されている、パンプーリャ美術館、カーサ・ド・バイリ、ヨット・クラブ、サン・フランシスコ・ジ・アシス教会の4つが世界遺産に登録。

登録されている主な構成遺産

パンプーリャ美術館

パンプーリャ美術館
画像素材:shutterstock

1940〜1942年に建造された建造物で、もともとはカジノとして建造されたもの。外観はニーマイヤーに影響を受けたル・コルビュジエのデザインも反映されていて、内部はバーやレストラン、劇場などもありましたが、賭博に対する法規制により、1957年に美術館として再開されたもの。

カーサ・ド・バイリ

カーサ・ド・バイリ
画像素材:shutterstock

1943年に舞台を付属したレストランとしてオープンしたものの閉鎖され、現在は多目的スペースとなっています。ここは湖畔の地形に合うような曲線的なデザインとなっていて、ロバート・ブール・マルクスが設計した庭園も併設されていました。

サン・フランシスコ・ジ・アシス教会

サン・フランシスコ・ジ・アシス教会
画像素材:shutterstock

1943年に建造された放射状のシェルを採用した前衛的なデザインの教会。外壁には画家であるカンディド・ポルチナーリによる青色の壁画があり、イエス・キリストやアッシジの聖フランチェスコなどが描かれています。近くには、上広がりになっているモダンなデザインの鐘塔も併設。

当時はこのデザインはカトリック教会からは批判を受けた上に、ベロオリゾンテの市長であり、のちのブラジルの大統領であるジュセリーノ・クビチェックが支援者であったものの、彼も当初は取り壊しを要求するほどでした。その後、改築を重ねて現在の姿になり、やがて世界遺産になるほどの傑作に。

パンプーリャの近代建築群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

サン・フランシスコ・ジ・アシス教会/パンプーリャの近代建築群
画像素材:shutterstock

パンプーリャの近代建築群が評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
パンプーリャの近代建築群は、ニーマイヤーやブール・マルクスなどの芸術家たちによって作らたもので、風景と調和しながら造形芸術とデザインが融合した新しい近代建築や空間設計であるという点。

登録基準(ii)
パンプーリャの近代建築群は、北米や南米、近代ヨーロッパの建築様式と相互に影響を与え、建築や空間設計、造形芸術を繋げたもので、南米の新しい国家のアイデンティティを表した近代建築の新たな方向性であったということ。

登録基準(iv)
パンプーリャの近代建築群は、南米の建築史の特定の段階を示し、公共建築に関する社会の変化も見られます。当時は人々が自ら国家建設に参加する風潮もあり、ベリオリゾンテの庭園都市設計は、革新的なデザインの公共建築を通じて、文化的な自立も見られる場所となったという点。

世界遺産マニアの結論と感想

パンプーリャは、後に新首都であるブラジリアを設計したニーマイヤーの初期の作品群であり、ここはブラジルの芸術家たちと合わせて設計した、南米独自の建築物が見られ、北米だけでなく、ヨーロッパの建築物に相互に影響を与えたものであったという点で評価されています。そして、これはブラジルという国家のアイデンティティともなった新たなる近代建築であるというのもポイント。

ちなみに、サン・フランシスコ・ジ・アシス教会は、広島の世界平和記念聖堂のコンペで、丹下健三氏が考案したデザインに大きな影響を与えていたものの、当時は否定的な意見も多く、不採用となってしまいました。しかし、その後、サン・フランシスコ・ジ・アシス教会は世界遺産になったのだから、時代とともに価値観は変わるものですね。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

目次