登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1),(2),(5) |
登録年 | 2009年 |
イラン南西部のシューシュタルは、紀元前5世紀、アケメネス朝時代に遡るほどに歴史が深い都市で、カルン川という大きな川を利用して2つの運河が造られました。ここはササン朝ペルシャ(224〜651年)の時代の水利システムが残り、そのうちのガルガー運河は現在も利用されていて、都市の周囲の農地や果樹園に水を届け続けています。
ここではシューシュタルの歴史的水利施設がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、シューシュタルについて詳しくなること間違いなし!
シューシュタルの歴史的水利施設とは?
シューシュタルは、イラン南西部に位置するフーゼスターン州の都市で、イラン最長のカルン川沿いに紀元前5世紀に設立。この街は、周囲にあるアケメネス朝時代の首都の一つ・スーサにも関連していて、3世紀のササン朝時代になると、灌漑や水の供給、水の貯蓄を目的とした水利システムが作られました。
これらの水利システムはかつてこのあたりを支配したエラム王国やメソポタミアの文明がルーツとなり、現在のヨルダンにあったナバテア王国のダムやトンネルの影響も受け、やがてローマ帝国の土木工学などにも影響を与えたものと考えられています。その後のアラブ時代になっても利用され続け、現役のガルガー運河は、郊外の灌漑用に開発された水路であり、都市の周囲は農地や果樹園が広がっているのが特徴。
19世紀以降シューシュタルは、水利施設が荒廃してしまいますが、20世紀後半に再建されました。現在でもシューシュタルにはサラセル城、コラー・ファンギの塔、橋、ダム、水路など、かつての水利システムの名残が残っています。
シューシュタルの歴史的水利施設はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
シューシュタルが評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
3世紀に設計されたシューシュタルの水利施設は現在でも使用されていて、その規模や持続可能な運用など、人類の創造的資質を示す傑作であるということ。
登録基準(ii)
シューシュタルの水利施設は、かつてのエラム王国やメソポタミア、ナバテアの灌漑の技術、それらはローマの技術者にも影響を与えるほどで、イランのさまざまな王朝でも同様。古代とイスラム時代にこの地で技術交流があったことを証明しているという点。
登録基準(v)
シューシュタルの水利施設は、山を下るように運河を造ることによって、都市の供給、農業用の灌漑、魚の養殖、工房など、水を利用できるようになったという砂漠地帯を開発するためのユニークな技術であるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
シューシュタルの歴史的水利施設は、古代のエラム王国を含めたメソポタミアの技術が継承され、あまりにも画期的だったのでローマ帝国にも伝えられました。そして、運河を築くことによって砂漠地帯だったこの地が緑豊かな農地となり、開発されるようになったという点で評価されています。
ちなみに、シューシュタルの町の下には、カナートと呼ばれる地下水路があり、各家の地下には今でもカナートが見られ、地下に水が流れているのです。そして、ここは世界遺産に登録されていませんが、他の都市のペルシャ式カナートは世界遺産に登録。これは砂漠を生き抜く人類の知恵でもありますね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。