登録区分 | 複合遺産 |
登録基準 | (3), (5), (7), (9), (10) |
登録年 | 1986年(2004年、2005年拡張) |
ブリテン島本土から北西へ約180km。北大西洋に浮かぶセント・キルダ諸島には、ヨーロッパでも最高峰の崖が並び、絶滅危惧種のパフィン(ニシツノメドリ)やカツオドリなど海鳥の繁殖地でもあります。最大の島・ヒルタ島には新石器時代の遺跡も存在し、複合遺産としても登録。
ここではセント・キルダ諸島がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、セント・キルダ諸島について詳しくなること間違いなし!
セント・キルダ諸島とは?
スコットランド北西に浮かぶ島々で、ブリテン島にほど近いアウター・ヘブリディーズにあるノース・ウイスト島からも約64kmも離れた位置にあります。これらは6500〜5200万年に形成された火山島で、ヨーロッパでも最高峰の崖が続くという地形で、高さは約400m近いものも点在。ここは本土から遠いということ、そして、高い波と強風によって独自の生態系を築くのに格好の場所でもありました。
自然遺産
ここは大西洋の北東部において最大規模の海鳥の繁殖地となっています。特に絶滅危惧種のパフィン(ニシツノメドリ)、貴重種のシロカツオドリやフルマカモメなどが見られることでも有名。孤立した島々にはそれぞれ独自の羊の品種が見られ、ヒルタ島ではヨーロッパでも原始種であるソアイ種、北側の孤島・ボーレー島には希少な品種であるボーレー種が見られます。
文化遺産
絶海の孤島ではあるものの、最近の調査によると新石器時代から人が住んでいたとされています。島には中世の家屋や貯蔵庫跡などが残っていて、人々が天然資源を利用し、農業をしながら自給自足で暮らしていたという跡が残存。しかし、1930年に島民によって島が放棄されてしまいます。現在も放棄される前に暮らしていた家々や学校、教会などが点在。
セント・キルダ諸島はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
セント・キルダ諸島が評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
セント・キルダは絶海の孤島でも人間が何千年にもわたって暮らし続けたという証拠が残っているということ。
登録基準(v)
セント・キルダは、土地を耕しつつ、羊を飼育していたという自給自足が見られ、伝統的な土地利用の名残が文化的景観となっているという点。
登録基準(vii)
セント・キルダは火山によって形成され、それが風化と氷河によって削られ、高い崖や侵食によって形成された柱など、ダイナミックな風景が見られるということ。
登録基準(ix)
セント・キルダの各島は、海鳥の生息地であり、海洋には多様な生態系も見られるという点。
登録基準(x)
セント・キルダは、パフィン(ニシツノメドリ)やカツオドリなど、北大西洋とヨーロッパを行き来する100万羽以上の海鳥が生息する場所であり、新石器時代から存在する羊の品種・ソアイ種も見られるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
大西洋北東部でも最大の海鳥の生息地であり、絶滅危惧種の海鳥や古い羊の品種が見られるという点で自然遺産として評価。絶海の孤島ではあるものの、ここには何千もの間、人が暮らし、その名残が残っていることから、文化遺産としての側面を持ち、複合遺産となっています。
ちなみに、セント・キルダというのはいかにも聖人の名前のように思えますが、実は聖キルダという聖人は存在しません。名前の由来はさまざまな説がありますが、北欧の古い言語である古ノルド語が由来するとか、オランダ語を誤って名付けられたなどさまざま。結局、今でも不明なまま。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。