登録区分 | 複合遺産 |
登録基準 | (5), (7), (8) |
登録年 | 2014年 |
ハノイから南へ約100km。チャンアンは紅河デルタ地域の南側に位置し、石灰岩のカルスト地形となっています。ここに3万年以上にも渡って人々が気候や環境に対応しながらも暮らし続ける場所。登録範囲には考古学遺跡はもちろん、ベトナムの古都ホアルーも含まれ、寺院や仏塔、村、田園までも合わせて文化的景観を作り出しています。
ここではチャンアンの景観関連遺産がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、チャンアンについて詳しくなること間違いなし!
チャンアンの景観関連遺産とは?
ベトナムの首都ハノイから南に位置するニンビン省のチャンアンの風景そのものが登録されています。よって、スポットというよりも登録地域に含まれる建築物や自然を含めての「文化的景観」が世界遺産として登録されたもの。エリアとしては、古都ホアルー、チャンアン=タムコック=ビックドン景勝地、ホアルー特殊用途林の3つで構成。石灰岩が形成した地形から水田地帯まで登録されています。
ニンビン省南部の紅河デルタ地域の南側にあるチャンアンは、カルスト地形で、このあたりはかつては海であり、その侵食により削り取られ、石灰岩の岩山が形成されました。そして、人々は高い位置にある洞窟で3万以上に渡って住み続け、これは環境に対応して人類が生きていたという証拠でもあります。
古都ホアルー
ハノイの約90km南に位置する古都。ここは丁朝(966〜980年)の王都であり、丁朝が滅んだ後、李朝(1009〜1226年)が昇龍(ハノイ)へ遷都した1010年まで都が置かれました。その後は、軍事拠点となったり、寺院や城壁などが建造されたりしましたが、現在は遺構が残るのみ。
丁朝の皇帝を祀ったディン・ティエン・ホアン祠と、前黎朝の皇帝を祀ったレ・ダイ・ハイ祠という2つの祠が残りますが、これらは17世紀に再建されたもの。
チャンアン=タムコック=ビックドン景勝地
古都ホアルーからさらに南へ広がるエリア。チャンアン景勝地とタムコック=ビックドン景勝地をまとめたもので、両方ともカルスト地形が見られます。ここは「陸のハロン湾」と呼ばれるほどに、丸い山々が並ぶ景勝地。約2億4000年前に形成された地形で、この辺りは海中に沈んでいた時期があり、それが隆起して侵食されることにより現在の形になったとされています。
ホアルー特殊用途林
ホアルー周辺の森林保護区を指すもので、小高い山々の木々が林立する風景が特徴的。絶滅危惧種の植物などが見られ、生物多様性を保護する目的で登録されています。
ここには先史時代(更新世後期〜完新世初期)に人の手によって作られた洞窟があります。一帯は3万年前から人々が住み始め、高い位置に住居があることから、低い位置にある湿地には居住することができなかったということも分かっています。そこには狩り用の礫器や火を使っていたと思われる痕跡なども発見。
チャンアンの景観関連遺産はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
チャンアンが評価されたのが、以下の点。
登録基準(v)
洞窟住居などを含み、3万年以上に渡って人類が気候や地理、環境に対応して暮らしてきたということを示すということ。
登録基準(vii)
チャンアンのカルスト地形が見られ、木で覆われた石灰岩の岩山が並び、山間に水田が続くといった美しい景観が続くという点。
登録基準(viii)
かつてはこの辺りは海であり、その隆起によって石灰岩が削られ、丸い岩山や洞窟などさまざまな形となり、カルスト地形の発展が見られるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
3つのエリアに分けて記載しましたが、ここは文化的景観ということで、自然と人間の作り出した景観を踏まえての世界遺産であるということから、洞窟住居からホアルーの寺院や霊廟、現在の人々が管理している水田まですべて合わせて評価されています。そして、その地形はかつて海から隆起して現在の「陸のハロン湾」に至るという珍しい地形があることもポイント。
ちなみに、2014年に登録なので、割と最近の遺産ではあるのですが、東南アジア初の複合遺産でもあります。東南アジアの複合遺産はチャンアンだけというのは意外ですね!
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。