登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2),(4) |
登録年 | 2023年 |
トルコ共和国の大部分を構成するアナトリア半島には、10〜11世紀に中央アジアで流行してた木の柱や木製上部構造を取り入れたモスクが各地で建造されました。13世紀以降の5つのモスクが登録されていて、これはトルコでも特殊なタイプのモスクで、内部の木材の表面にはカラフルな装飾が見られるのが特徴。
ここでは木柱と木製上部構造を備えたアナトリアの中世モスク群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、アナトリアの中世モスク群について詳しくなること間違いなし!
木柱と木製上部構造を備えたアナトリアの中世モスク群とは?
アナトリアとは、現在のトルコ共和国のアジア側、アナトリア半島を示すエリア。この地では木材が素材として1万年に渡って建築物に使用されてきました。11世紀後半にセルジューク朝(1038〜1194年)によってアナトリアが支配されると、現在はウズベキスタンに属するサマルカンドとブハラ、ヒヴァで10〜11世紀に築かれた木柱と木製の屋根を持つモスクをモチーフに、13世紀から木材を使用したモスクが築かれました。
世界遺産としては、セルジューク朝から分裂してアナトリアで独立したルーム・セルジューク朝(1077〜1308年)とベイリク時代(11世紀後半〜15世紀ころ)時代に築かれたモスクが中心で、コンヤ県のエシュレフォール・モスク、カスタモヌ県のマフムート・ベイ・モスク、スキシェヒル県のシヴリヒサール・モスク、アフィヨンカラヒサール県のアフィヨン大モスク、アンカラ県のアルスラーンハーネ・モスクの5つが登録。この様式のモスクはオスマン帝国時代末期の20世紀初頭まで建造され続けました。
これらのモスクの内部にある木製部分の表面には「カレム・イシ」と呼ばれるカラフルな装飾がされていて、カレムと呼ばれるブラシを使用して木材の表面に塗られていきます。それらは幾何学模様や花がモチーフになっていて、それぞれのモスクの保存状態も良いというのが特徴。
特にアンカラにあるアルスランハーネ・モスクは、13世紀のモスクで、トルコで現存する最古のモスクでもあります。外観はシンプルですが、建物はカラフルになっていて、合計で24本もの木の柱が屋根を支えています。柱の一部は、アカンサスの葉をモチーフにしていて、まるで古代ローマ時代のデザイン。
木柱と木製上部構造を備えたアナトリアの中世モスク群はどんな理由で世界遺産に登録されている?
木柱と木製上部構造を備えたアナトリアの中世モスク群が評価されたのが、以下の点。
登録基準(ii)
木柱と木製上部構造を備えた中世モスク群は、アナトリアの建築物では珍しく、10〜11世紀に中央アジアのテュルク系民族の技術がもたらされたもの。過去の記録によると、かつてはサマルカンド、ブハラ、ヒヴァなどのテュルク系の古い都市のモスクは木柱と木製上部構造を備えていて、ウズベキスタンの首都タシュケントやサマルカンドの博物館には、モスクで使用された木の柱が展示されていて、その繋がりが見られるという点。
登録基準(iv)
アナトリアの中世モスク群はあまり現存しておららず、洗練された木造品と塗装された内装を持つモスクはこの様式のモスクの優れた例であります。オスマン帝国時代以降も木造屋根・柱の技術が用いられ、アナトリアのエーゲ海地方のデニズリでは15件ほど残っています。そして、これらは木材を使用することから森林地帯に建てられていて、人間と自然の関係性を示すものであるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
アナトリア各地に残る木柱と木製上部構造を備えた中世モスクは、10〜11世紀に中央アジアのテュルク系の民族の建築技術が伝えられたというこが分かるもので、このモスクのある場所は森林地帯であり、人間と自然の関係性も示すという点で評価されています。
ちなみに、現在のトルコ共和国に住むトルコ人は、テュルク系民族がルーツとなっていて、もともと彼らは北東アジアにいたモンゴロイドだったため、唐の時代(618〜907年)までは黒髪で黒目の人種でした。その後、中央アジア経由で西アジアへ進出したため、コーカソイド系の遊牧民との混血が進み、現在はコーカソイドに分類されているのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。