登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2), (3) |
登録年 | 2017年 |
ジョグジャカルタは、ジャワ島の南東部に位置する大都市。ここには現在もスルタンが住む宮殿を中心とした歴史地区が残されています。現在の町並みは18世紀に建造され、島に残る宇宙観や信仰が都市設計の中に見られるというもの。
ここではジョグジャカルタの宇宙論的枢軸とその歴史的建造物群が、なぜ世界遺産なのか?世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ジョグジャカルタについて詳しくなること間違いなし!
ジョグジャカルタの宇宙論的枢軸とその歴史的建造物群とは?
ジャワ島中部の南岸に位置するジョグジャカルタ州の州都。ここは古くから農業が盛んで、米どころとしても有名でした。この地は「マタラム」と呼ばれ、16世紀後半になると、イスラム王朝のマタラム王国(1587〜1755年)が設立されると、広大な範囲を領土とするものの、オランダの進出によって保護国とされてしまいます。1755年にマタラム王国はジョグジャカルタ王国を含めた小国が分割し、現在のジョグジャカルタ特別市にはスルタン(君主)が暮らす宮殿が置かれ、ここは王国の中心地として発展していきます。
ジョグジャカルタの歴史地区は、北部のメラピ山(標高2930m)、東西には3つの川、南部のインド洋との間に位置する肥沃な土壌の上に築かれ、ここが選ばれたのは古くからヒンドゥー教が信仰されてきたジャワ島の宇宙観から。彼らはジャワ島南東のスメル山(標高3676m)を中心に海と陸の環に囲まれているという宇宙観を持っていたため、この地はまさにスルタンの宮殿と都市を設立するのに適した土地でもありました。
ジョグジャカルタの中心部は、スルタンの宮殿である「クラトン」を中心にしていて、クラトンから約2km北にある「トゥグ・パル・プティ」、クラトンから南へ約1km南にある「パングン・クラップヤック」という3つの建造物が南北に通り沿いに結ばれています。これは人間のライフサイクルを示していて、パングン・クラップヤックは受胎、クラトンは成人、トゥグ・パル・プティは神(創造主)と、受胎から神のもとへ戻るまでの人生の流れを表したもの。
他にもパティ(首相)の邸宅として建造された「ケパティ・ハン」や、スルタンの市場を意味する「パサール・ベリンハルジョ」も含まれていて、これらも島に残る宇宙観によって配置されたもの。歴史地区は合計で12.6平方kmもの敷地が登録されています。
登録されている構成資産
クラトン(スルタンの宮殿)
街の中心部に位置し、ここはジョグジャカルタ王国の開祖である初代スルタン・ハメンクブウォノ1世が建造して以降、現在でもスルタンが暮らしている宮殿。ここは南から宮殿の南口である「プレンクン・ガディン」、「南アルン・アルン」、「南カマンドゥンガン(門)」、従者の試験や教育を行った「ヤクマガンガン」、王族が暮らしていた宮殿が集まる「クダトン」、謁見の間である「パグララン」、「北カマンドゥンガン(北門)」、「カウマンの大モスク」、「北アルン・アルン(広場)」といった建造物が南北に連なるという構造になっています。
ここは街の構造と同じように、カマンドゥンガン(「子宮」という意味)から入り、クマガンガンで学び、成熟した人間になるとクダトンに入ることができるという、人生のサイクルにちなんだ構造。
パングン・クラップヤック
クラトンから南へ約2kmの位置にある方形の建造物。面積は基礎部分で17.6m×15mで高さは10m。これはヒンドゥー教で女性器のシンボルであるヨニを示したものとされています。ここは王領であった森の中に建造され、狩猟をする際の足場としても利用されていました。
トゥグ・パル・プティ
クラトンから北へ約2.5kmの位置にある石造の柱。正方形の柱で高さは15mあり、頂部にはユニコーンの角のような螺旋を加えられています。ここはスルタンが宮殿で瞑想を行う際の目印にもなったもの。現在は「ジョグジャカルタ・モニュメント」と呼ばれ、街のランドマークにもなっています。
ジョグジャカルタの宇宙論的枢軸とその歴史的建造物群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ジョグジャカルタが評価されたのが、以下の点。
登録基準(ii)
ジョグジャカルタの都市計画は、先住民の文化と他の地域の文化の融合、特にヒンドゥー教とイスラム教の文化的融合が見られるジャワ島の哲学に基づいて設計されたということ。
登録基準(vi)
ジョグジャカルタの歴史的建造物群は、6kmにも続く南北軸は北のメラピ山と南のインド洋を結ぶように設計されていて、クラトンを中心に軸に沿って結ばれた重要な文化遺産が並び、これは生命のサイクルを含む、ジャワ島の文化における宇宙に関する重要な概念を表現しているという点。
世界遺産マニアの結論と感想
ジョグジャカルタは、イスラム王朝であったジョグジャカルタ王国時代に設計されたものですが、もともと根付いていたヒンドゥー教の概念を含めた宇宙観が都市計画に反映されていて、これは現在でも儀式を通じてこの信仰が継続されているという点で評価されています。
ちなみに、現在のジョグジャカルタは、観光地化が進んでいて、観光客が集まるマリオボロ通りにはレストランやお店などが並んでいます。屋台でよく売られている「グドゥッ」は、ジャックフルーツをココナッツミルクと砂糖で煮込んだもの。これはフルーツではなく、「おかず」的なメニューで、チキンやゆで卵、豆腐など一緒に煮込んであって白いご飯で食べるのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。