南米大陸ではブラジルに次いで大きな面積を誇る国家で、南極にも近いことから豊かな自然が見られるというのが特徴。ブラジルとの国境にあるイグアスの滝でも有名ですが、アルゼンチンには世界遺産はいくつあるでしょうか?
ここでは、アルゼンチンの世界遺産を世界遺産マニアが一覧にして分かりやすく解説。それぞれの遺産を簡潔に解説していきましょう。
目次
ロス・グラシアレス国立公園
パタゴニアは、アンデス山脈南部に位置する広大なエリアで、西側はチリ、東側はアルゼンチンで構成されています。ロス・グラシアレス国立公園は、アルゼンチンのサンタ・クルス州南西部にあり、チリの国境の近くにある公園。
3つの巨大な氷河が有名で、透明な氷によって青白く光り、独特の景観を持ちます。「ペリト・モレノ氷河」は夏になると展望台から先端部が崩落する姿を見られ、観光客も多く訪れる氷河でもあります。
詳細はこちら↓
グアラニーのイエズス会伝道所群(ブラジルと共同)
ブラジルとアルゼンチンの国境沿いの密林には、17〜18世紀にかけてヨーロッパから先住民のグアラニー族へキリスト教の伝道にやってきたイエズス会による伝道所(レドゥクシオン)があります。
もともとはブラジル側の伝道所だけの登録でしたが、1984年にアルゼンチン側のサン・イグナシオ・ミニ、サンタ・アナ、ヌエストラ・セニョーラ・デ・ロレート、サンタ・マリア・マジョールの4つの伝道所跡も追加で登録。
詳細はこちら↓
イグアス国立公園(アルゼンチン側)
アルゼンチンとブラジルの国境に位置するイグアス川。ここには全体の幅が2700m以上、最大の高さは80mで世界最大の水量を誇る滝、イグアスの滝があることで有名です。
滝はほとんどがアルゼンチン領となっており、上流がアルゼンチン側で下流がブラジル側。それぞれ「イグアス国立公園」としていて、登録面積はブラジルのほうが広大です。最奥部にある「ガルガンタ・デル・ディアブロ(悪魔ののど笛)」と呼ばれる滝は、高さ80mで毎秒7000トンもの量が流れ落ちるというイグアスの滝の中で最も有名な場所。
詳細はこちら↓
ピントゥーラス川のクエバ・デ・ラス・マノス
アルゼンチン最南部のサンタ・クルス州。ピントゥーラス川沿いの渓谷には洞窟があり、ここでは紀元前1万1000年前から紀元700年まで岩絵が描かれました。
その中でも最も個性的なのがクエバ・デ・ラス・マノス(手の洞窟)。洞窟の深さは24mで高さは10mほど。ここはパタゴニアの先史狩猟採集社会のルーツだと考えられている場所。
詳細はこちら↓
バルデス半島
バルデス半島とは、アルゼンチン南部のチュブ州の東側にある、大陸から突き出たように位置する半島のこと。まるで島のような形をしていて大陸とは橋のような狭い土地で結ばれ、面積は合計で約3600平方km。
ここは海洋哺乳類や鳥類の世界的に重要な生息地で、亜南極圏に生息しているミナミゾウアザラシといった珍しい動物も見られます。近海では、貴重なミナミセミクジラなど、30種類以上の哺乳類が生息していることでも有名。
詳細はこちら↓
コルドバのイエズス会伝道所とエスタンシア群
コルドバ州の州都コルドバはブエノスアイレスに次ぐアルゼンチン第2の都市。コルドバの中心地には、イエズス会の神学校が築かれ、これは後に南米でも最初期の大学となるコルドバ大学の前身でもあり、ここにはイエズス会の教会、修道院、学生寮などが今でも残されています。
周囲に位置する5つのエスタンシア(農業共同体)はイエズス会の修道士たちが先住民たちとともに暮らした跡でもあります。
詳細はこちら↓
イスキグアラスト/タランパヤ自然公園群
アルゼンチン北東部に位置するイスキグアラスト州立公園とタランパヤ国立公園。ここは高さ200mにも達する赤い砂岩の断崖や奇岩などが続く景観で有名です。
そして、「イスキグアラスト累層」と呼ばれる三畳紀後期の地層が存在し、世界でも最古級の爬虫類が発見されていて、そして、原始的な恐竜であるエオラプトルの化石も発掘。
詳細はこちら↓
ケブラダ・デ・ウマウアカ
アルゼンチン北部に位置するフフイ州は、ボリビアとチリとの国境の近く、アンデス山脈に中でも高原地帯からグランデ川に浸食されたケブラダ・デ・ウマウアカ(ウマウアカ渓谷)が155kmも続くというエリア。
ここには先史時代の集落跡やインカ帝国時代の要塞などの遺跡が残り、この地が1万年に渡って交易路として繁栄したということを示す文化的景観が見られます。
詳細はこちら↓
カパック・ニャン アンデスの道(インカ道)(エクアドル・コロンビア・チリ・ボリビアと共同)
カパック・ニャンは、インカの人々によって数百年にも渡って築かれ、北からコロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンにまたがる3万kmの街道。ここは約6000m級の山々、熱帯雨林、渓谷、砂漠などを通る、世界でも最大規模の道路網でもあります。
カパック・ニャンはインカ帝国の首都であったペルーの都市・クスコの広場から、東西南北に延びる4つの道が主要道路となっています。登録されているのは、コリャ・スウユ(南方)で、現在のボリビアを通り、チリやアルゼンチン中部までを結んでいたルート。
詳細はこちら↓
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献(他6ヶ国と共同)
ル・コルビュジエ(1887〜1965年)は、近代建築の三大巨匠の一人として有名。数多くある作品の中でも7ヶ国17の建築物が登録されていて、これはそれまでのヨーロッパの建築とは異なり、彼自身が半世紀以上かけて磨いていった新しい概念が導入されたもの。
アルゼンチンで登録されているのは、首都ブエノスアイレスの南東約50kmの位置にある都市ラプラタにある邸宅「クルチェット邸」。ここはアルゼンチンの気候に合わせて「日除け格子」を工夫し、建物をU字にするという地元の建築様式を取り入れていました。
詳細はこちら↓
ロス・アレルセス国立公園
パタゴニア地方北部・アルゼンチン側のチュブ州に位置し、アンデス山脈内に広がる広大な公園。ここはチリの国境に面し、モレーンやカール(圏谷)、透き通った氷河湖、U字側の谷など、氷河作用によって形成された地形が点在しています。
ここには「アレルセ」と呼ばれる、絶滅危惧種のパタゴニアヒバが見られ、中には樹齢が2600年以上のものがあるほどに古くから存在するという点で貴重。
詳細はこちら↓
ESMA「記憶の場」博物館-かつての拘禁、拷問、絶滅の秘密センター
アルゼンチンは、1976年から1983年にかけて当時の軍事政権によって行われた「汚い戦争」によって、多くの政治家や学生、ジャーナリストが逮捕・監禁・拷問され、3万もの人々が死亡もしくは行方不明になりました。当時は各地に「秘密拘留・拷問・絶滅センター(CCDTyE)」が置かれ、1976年までに610ものセンターが築かれたとされます。
センターは各地にありましたが、首都ブエノスアイレスにある海軍機械学校(ESMA)にあったセンターは2004年から博物館となり、国家テロによる悲惨な出来事を現代に伝える場として公開されています。
詳細はこちら↓
世界遺産マニアの結論と感想
アルゼンチンだけで登録されているのは9件ではありますが、共同で登録されている遺産を含めると、文化遺産が7件、自然遺産が5件と合計で12件。イグアスの滝やロス・グラシアスの氷河のイメージだけに自然遺産が多いと思いきや、先住民の遺跡や修道院の跡など、文化遺産も多いというのもアルゼンチンの魅力でもあります!
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。