登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3),(5) |
登録年 | 2023年 |
アゼルバイジャンの北部、ロシアの国境に近い高地にあるのがキナルグ村。ここは青銅器時代から人が住んでいたとされ、現在も遊牧民族であるキナルグ人が暮らし、村の建造物は要塞のようであり、無駄のないスペースで設計されています。人々はこの集落を夏の間だけ利用し、冬になると移牧として麓に暮らすというユニークな生活様式が今でも続けられているのが特徴。
ここではキナルグ人の文化的景観と移牧の道がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、キナルグ人の文化的景観と移牧の道について詳しくなること間違いなし!
キナルグ人の文化的景観と移牧の道とは?
キナリグ人は、アゼルバイジャンのコーカサス山脈の南側にある集落に暮らす遊牧民族のこと。ここは青銅器時代の4000年前から人が住んでいた跡も残り、海洋に存在する生物の化石も発掘されるほど。住民はかつてこの地方に存在したカフカス・アルバニア王国(紀元前2世紀〜8世紀ころ)との関連性も見られ、現在のキナルグ人は王国の子孫のシャダグ族というこの地方に古くから住む民族の一派と考えられていて、独自の言語を持っています。
「移牧」とは、季節ごとに放牧のために移動するというもの。彼らの集落は標高2300mの位置にあり、牧草地と川に囲まれた丘の上に位置していて、家の屋根が隣の家の玄関テラスとなるような段々状の構造になっているのが特徴。村は夏に暮らすためのもので、冬になると山の麓で暮らすというの伝統的な遊牧生活となっています。彼らは冬の間は低地で暮らし、家畜に餌を与え、早春になると村へと戻っていくというサイクル。
キナルグ人の文化的景観と移牧の道はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
キナルグ人の文化的景観と移牧の道が評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
キナルグ村は、先史時代からコーカサス山脈の高地に住む民族の文化的伝統が現在も見られ、かつてはカフカス・アルバニア王国の部族の一派であったとされます。ここは山々に囲まれていて、他のエリアから独立していたために独自の言語と伝統文化を続ける環境にありました。そして、夏は村で暮らし、冬は低地に移住するという、昔ながらの遊牧生活を1000年以上に渡って続けているという証拠でもあるという点。
登録基準(v)
この地には、古代から使用されている道、牧草地とキャンプ場、霊廟、モスクが見られ、この発展したネットワークは、環境条件に適応した持続可能な社会システムを示しているということ。
世界遺産マニアの結論と感想
キナルグ人は、カフカス・アルバニア王国にルーツを持つとされるほどに古くからこの地で暮らす遊牧民族で、昔ながらの移牧を行うために集落の建造物は無駄のない構造で、伝統的な生活が現代も続けられているという点で評価されています。
ちなみに、「カフカス・アルバニア王国」は、コーカサス地方の先住民であるウディ人の祖先カフカス・アルバニア人による国家であり、現代の南ヨーロッパに位置する国家「アルバニア」とは全く無関係なので注意。しかし、欧文のスペルはどちらも「Albania」なので、かなりややこしいのですが…。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。