登録区分(暫定リストに記載) | 文化遺産 |
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登録基準(暫定リストに記載) | (2),(3),(4),(5),(6) |
申請年(暫定リストに記載) | 2007年 |
高松塚古墳(たかまつづかこふん)は「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の構成遺産の一つ。1972年に日本で初めて極彩色壁画が発見され、特に「飛鳥美人」とも呼ばれる美しい女性像をはじめ、四神図など、大陸との交流が見られるのが特徴。ところで、高松塚古墳はなぜ世界遺産候補なのでしょうか?
ここでは高松塚古墳がなぜ世界遺産候補なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、高松塚古墳について詳しくなること間違なし!
高松塚古墳とは?
古墳の場所はどこにある?

奈良県明日香村に位置する7世紀末から8世紀初めにかけて築かれた古墳。飛鳥では南西部に位置し、下段は直径23m、上段は直径18m、高さ5mの二段式の円墳となっています。1972年に「飛鳥美人」として有名な極彩色壁画が発見され、これは日本初の極彩色壁画ということで話題となりました。
1974年に国宝に指定されたものの、壁画はそのまま保管されることとなったため、雨水やカビなどによって壁画の漆喰が大幅に劣化。そのために2007年に石室は一旦解体され、修復されました。2009年には建造当時の形状に戻され、現在は定期的に一般公開されています。
被葬者は誰?
被葬者については、天武天皇(?〜686年)の皇子説や臣下説、朝鮮半島系王族説の3つに分かられているものの、ハッキリしないところ。古墳は2005年の発掘調査によって、藤原京期(694~710年)と確定されました。盗掘に遭ったため、資料としては不十分ですが、被葬者の人骨や服装、副葬品などを踏まえると、40から60代の人物と推測されることから、天武天皇の皇子である忍壁皇子(おさかべのみこ)であるのが有力ですが、まだまだ確証はありません。
「飛鳥美人」が描かれた壁画は何文化に属する?



石室は南北の長さが約265cm、東西の幅が約103cm、高さが約113cm、大人が2人かがんで入れる程度の大きさ。横口式石槨と呼ばれる系統で、そこ椅子の上に板石を組み合わせて造られたもの。
内部の4面には彩色が施された壁画があり、四方を守護する四神(東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武)が描かれていたもの、朱雀は鎌倉時代に盗掘に遭ったため、ここは失われています。天井には星が描かれていて、紫微垣(しびえん)なども見られ、古代中国の世界観が見られるもの。



西壁に描かれた女子群像は発見当時から色鮮やかで、歴史の教科書などで紹介され、いつしか「飛鳥美人」と名付けられました。当時の貴族の服装や髪型、装飾品が詳細に描かれており、これらは中国の影響が見られ、北朝鮮の高句麗古墳群の画風とよく似ていて、中国・朝鮮半島との交流の影響が見られるもの。
これは飛鳥時代に華開いた「白鳳文化」に属していて、近くにあるキトラ古墳の壁画とともに、中国など大陸の影響を受けたものと考えられています。
呪いがある?



発掘当時から高松塚古墳では、壁画の発掘に尽力した観光課長が肺がんになったり、近くに住む女性が原因不明の死を迎えたり、古墳発掘を支援していた自治体会長が交通事故で死亡したり…彼らは古墳の壁画が発見された「21日」に亡くなっていることから「呪いでは?」という噂が広まっているそうな。
とはいえ、これらは都市伝説の類なものですし、あくまでも偶然の連鎖とも言えます。別に古墳と関係あるのかと言われたら甚だ疑問ではあるので、偶然が続いて「呪い」にまで話が誇大された「ツタンカーメンの呪い」と同じようなものでしょう。
高松塚古墳はどんな理由で世界遺産に登録される予定なの?



日本政府が提出したの暫定リストに記載されている登録基準としては、以下の点。
※これらは2007年に暫定リストに記載された、日本における基準です。
登録基準(ii)
文化の交流を示すもの
登録基準(iii)
現存or消滅した文明の証拠
登録基準(iv)
人類の歴史を象徴する建築物の代表的な段階や景観の見本
登録基準(v)
伝統的集落や人類と環境の交流の見本
登録基準(vi)
人類史上に残る出来事や現存する伝統、思想、信仰、芸術
世界遺産マニアの結論と感想



高松塚古墳は1972年に発見されたばかりの古墳ではありますが、東アジアとの交流の象徴的な遺跡であり、その壁画からは飛鳥時代の文化を理解する上で重要な役割を果たしています。
ちなみに、高松塚古墳の壁画は普段は公開されていないのですが、近くにある「高松塚壁画館」に行けば、発見当時の精密な壁画模写「現状模写」や漆喰を塗って再現した「再現模造模写」まであるので、ある意味、現物を見るよりもリアリティを感じるかも?
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。