ブラジルの世界遺産「パラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分複合遺産
登録基準 (5), (10)
登録年2019年

ブラジル南部にあるパラチーは、ブラジルの中でも最も保存状態の良い湾港都市の一つ。パラチーの歴史地区と近くに位置するイーリャ・グレンジ(グランジ島)を含めた5つの保護区や国立公園が世界遺産に登録。近くで鉱山が発見されると、パラチーは17世紀後半にカミーニョ・ド・オウロ(黄金の道)の終着地となり、労働者として送られてきたアフリカ系黒人奴隷の入口ともなった場所。歴史地区は18世紀〜19世紀初頭の植民地時代の建造物が多く残っています。

ここではパラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、パラチーとイーリャ・グランジについて詳しくなること間違いなし!

目次

パラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性とは?

ラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性
画像素材:shutterstock

パラチーはリオデジャネイロ州南西部に位置する湾港都市で、この周囲にはイーリャ・グレンジ(グランジ島)を含めた5つの保護区や国立公園があり、合わせて複合遺産として登録。

敷地内には、パラチー歴史地区、イーリャ・グレンジ(グランジ島)州立公園、ブライア・ド・スル生物保護区、ヴィラヴェーリャの丘、ボカイナ山脈国立公園、カイルス環境保護地域と6つの構成遺産が存在。ここはリオデジャネイロ州とサンパウロ州にまたがり、標高2000m級の山々が並ぶボカイナ山脈から川がイーリャ・グレンジ湾へ流れ落ち、広大な大西洋の熱帯雨林地帯が形成。ここは有史以前から先住民たちが暮らしていて、敷地内には考古学遺跡も点在します。

ラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性
画像素材:shutterstock

森林地帯は高度によって4つの異なる分類が生まれ、ここは生物多様性のホットスポットであり、維管束植物の固有種があり、鳥類は固有種の約57%を占めるほど。沿岸部はマングローブの森があり、周囲はサンゴ礁で囲まれていて、島々には何百種もの哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類を保護していて、絶滅危惧種や固有種も見られます。

パラチー歴史地区

パラチー歴史地区/ラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性
画像素材:shutterstock

16世紀にポルトガル人がここを訪れ、港を作りました。17世紀後半にミナスジェライスの山で金鉱山が発見されると、ここは鉱山から続くカミーニョ・ド・オウロ(黄金の道)の終着地となり、ポルトガルへの金の輸出港として繁栄。

当時のパラチーは労働者として連れてこられたアフリカ系黒人奴隷の入口ともなり、防衛施設も多く作られました。現在の歴史地区は、教会や要塞など、18世紀〜19世紀初頭の植民地時代の建造物が多く残っています。

イーリャ・グレンジ(グランジ島)州立公園

イーリャ・グレンジ(グランジ島)州立公園/ラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性
画像素材:shutterstock

リオデジャネイロ沖に浮かぶ島で、もともとはハンセン病の隔離施設や刑務所があり、自由な移動や入植は禁止されていました。面積は193平方kmにも及び、ブラジルの大西洋の熱帯雨林の中でも生物多様性が多く残っているエリア。

島にはこの地方固有種も多く見られ、カッショクホエザルやタテガミナマケモノ、アカボウシインコなど、絶滅危惧種も生息しています。周囲の海には、熱帯、亜熱帯、温帯などに見られる海洋生物が暮らし、サメ、ウミガメ、マゼランペンギン、多くのクジラなどが生息しているのが特徴。

パラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

パラチー歴史地区/ラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性
画像素材:shutterstock

パラチーとイーリャ・グランジが評価されたのが、以下の点。

登録基準(v)
パラリーの文化的景観は、大西洋岸の森林と先住民と密接な関係があり、その地形と海を活用して建設した歴史的地区は、奴隷として連れてこられたアフリカの黒人の新大陸における原点であり、独自の文化が繁栄。ここは人間と周囲の自然との相互作用の優れた例であり、

登録基準(x)
世界遺産に登録されている5つの保護区や国立公園は、生物多様性のホットスポット。標高2000mにも及ぶ高低差があり、大西洋岸の森林に生息する維管束植物は固有種が豊富で、希少な植物は36種も見られ、そのうち29種が固有種。ここは大西洋岸の森に住む鳥類の45%が生息し、固有種は合計で57%にもなるというほど。敷地内にはウーリークモザルという絶滅危惧種が見られ、150種の哺乳類が見られます。海洋の生物多様性と固有種も同じように維持されているという点。

世界遺産マニアの結論と感想

パラチーは自然の中で溶け込むように先住民が暮らす跡が残り、歴史地区はアフリカから黒人奴隷がこの地に連れてこられた場所であり、独特の文化が花開いたという点で評価されています。そして、周囲の保護区や国立公園は希少な植物だけでなく、哺乳類や鳥類などの固有性も高いというのもポイント。

ちなみに、パラチーの金は18世紀後半に枯渇してしまいますが、19世紀からコーヒー交易で繁栄。また経済が衰えると、現在は古い町並みが残る上にリオとサンパウロの間にあるというアクセスの良さもあり、今は観光業も人気で、この地は何かと経済活動が盛んな地域でもあります。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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