モーリタニアの世界遺産「ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタの古いクスール」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(3), (4), (5)
登録年1996年

モーリタニアの内陸部のサハラ砂漠には11〜12世紀にモロッコやマリなどを結ぶための隊商都市が築かれました。ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタは12〜16世紀にかけて発展し、これらの都市にはクサールと呼ばれる旧市街が残っていて、四角いミナレットのあるモスクや狭い通りが広がり、西サハラの遊牧民の伝統的な文化と生活を今に残すもの。

ここではウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタの古いクスールがなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、クスールについて詳しくなること間違いなし!

目次

ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタの古いクスールとは?

画像素材:shutterstock

モーリタニア各地に残るウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタのクサール(旧市街)は、もともとは北アフリカから西アフリカ各地を結ぶ、サハラ砂漠の交易ルートの中継地として建造されました。ここは11〜12世紀に築かれ、12〜16世紀に発展した隊商都市の構造を今でもよく残されていて、四角いミナレットのあるモスクを中心に曲がりくねった狭い通りが広がるというもの。これらは中庭がある家々や装飾が施された石造りの建築物なども見られ、砂漠気候に適応しているという点で、西サハラの遊牧民の文化と生活様式を残しています。

これらの町は金や象牙、塩を運ぶというサハラ砂漠の交易だけでなく、イスラム文化の中心地として繁栄しました。北部のウワダンは12世紀からキャラバン交易の拠点として発展。中央部のティシットはタガン高地にあり、12世紀に建造された旧市街が残っていて、ナツメヤシの栽培で有名でした。

シンゲッティ

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モーリタニア北部のアドラール台地にあり、もともとは8世紀に町として建造されたものの、現在の旧市街は13世紀に再建され、図書館には1万冊以上の古書が残る文化都市として知られる都市でした。城壁は現存していませんが、旧市街の状態は非常に良いもの。

ここはメッカに向かう巡礼者たちが集まる都市となり、イスラム神学や科学などを研究する一大拠点となり、天文学や数学、医学なども発展しました。かつてはさまざまな本が置かれた図書館があり、学者たちが集まることでも有名でしたが、現在は多くの建造物が砂に埋れてしまいました。

ウアラタ

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モーリタニア南東のホズ・エッ・シャルギ州に属する町で、現在の旧市街は、かつては金や岩塩の通商で栄えた黒人王国・ガーナ王国一部で、11世紀に農耕民によって建造されたとされます。13世紀に再建されると、交易の拠点となり、イスラムの文化都市としても繁栄しました。

ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタの古いクスールはどんな理由で世界遺産に登録されているの?

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これらのクスールが評価されたのが、以下の点。

登録基準(iii)
古いクスールは、中世の遊牧民の文化と砂漠の交易を残すもので、北西アフリカと西アフリカに隣接するサハラ砂漠各地の都市はイスラム神学と文化の中心地でもあったという点。

登録基準(iv)
古いクスールは、装飾が施された石造りの建築物が並び、中庭を持つ家々の間を小道が広がるという砂漠環境に適した都市構造が残り、これは7世紀に渡る建築史が見られるということ。

登録基準(v)
古いクスールは、遊牧民の文化と砂漠環境の交易に代表される伝統的な暮らしが見られ、各都市には商品を保護するために倉庫が築かれることによって、イスラム文化と思想が発展する場になったという点。

世界遺産マニアの結論と感想

ウアダン、シンゲッティ、ティシット、ウアラタといった古いクスールは保存状態が良く、中庭を持つ家々が並ぶという砂漠環境に適した都市構造が見られ、これらは遊牧民の文化と通商の歴史を示し、その通商とともに人々が移動したことで、イスラム神学や科学が発展する場にもなったという点で評価されています。

ちなみに、ティシットは「パリ・ダカール・ラリー」が行われていたころは通過都市だったこともあって、観光客やレーサーが訪れた時代もありましたが、2009年以降はレースがサハラ砂漠で行われなくなったため、現在は周囲からも孤立した都市で人口も減少しつつあります。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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