オーストラリアの世界遺産「オーストラリアの囚人遺跡群」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(4), (6)
登録年2010年

18〜19世紀にかけて大英帝国によってオーストラリア大陸には数千もの囚人収容所が作られましたが、その中でも11の収容所が世界遺産に登録。帝国内から合計で約16万6000人の人々がこの地へ送られ、収容所では彼らを収監し、懲罰を与えるという機能がありましたが、さらに囚人たちには植民地開拓という労働を通じて社会復帰をさせるという目的もありました。これらの遺跡は囚人の流刑と西欧列強の植民地拡大施策の跡を現在に残すもの。

ここではオーストラリアの囚人遺跡群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、オーストラリアの囚人遺跡群について詳しくなること間違いなし!

目次

オーストラリアの囚人遺跡群とは?

ソルトウォーター・リヴァーの炭鉱史跡/オーストラリアの囚人遺跡群
画像素材:shutterstock

18〜19世紀に大英帝国が拡大していく中で、当時のオーストラリア大陸は英国の植民地であったために、ここは流刑地として数千もの囚人収容所が建造されました。その中でも、ノーフォーク島の「キングストンとアーサーズ・ヴェールの歴史地区」や、タスマニア州の「ダーリントン保護観察所」、「カスケーズ女子工場」、「ソルトウォーター・リヴァーの炭鉱史跡」など、11もの施設が世界遺産に登録。

収容所は帝国内で犯罪を行い、有罪判決を受けた人々や政治犯などを収容する場所で、9歳以上の女性と子供を含む、約16万6000人の人々が囚人として80年に渡ってこの地へと送られてきました。当時の帝国は奴隷制の廃止という背景もあり、収容所は収監したり、懲罰を与えたりするための機能がある一方、植民地開拓という労働を通じて社会復帰させるという目的もありました。これは当時のヨーロッパの植民地を持つ国家で主流であった法的措置でもあり、やがて現在の西欧諸国における刑罰のモデルともなったのです。

しかし、オーストラリアで確立された植民地制度は、西欧諸国による大規模な囚人の入植へと繋がり、先住民であるアボリジニの居住地が減っていき、後に大きな衝突を生むことになったのです。

カスケーズ女子工場

カスケーズ女子工場/オーストラリアの囚人遺跡群
画像素材:shutterstock

タスマニア州の南部サウス・ホバートに存在した工場兼刑務所であった場所。ここは1827年に建造されたものの、水はけが悪く、5つの工場が作られたものの、女子工場としては1856年には廃止されました。その後は、女子刑務所、病院、少年院として利用されたものの、1904年には完全閉鎖。

そのため、ここは当時の女子工場の姿をそのまま残す唯一の女性刑務所跡であるという点で貴重なもの。

オーストラリアの囚人遺跡群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

フリーマントル刑務所/オーストラリアの囚人遺跡群
画像素材:shutterstock

オーストラリアの囚人遺跡群が評価されたのが、以下の点。

登録基準(iv)
オーストラリアの囚人遺跡群は、18〜19世紀にかけて西欧列強による刑務所制度が、国外追放と強制労働へと転換されたことを示す例であり、大英帝国による広大な植民地施策でもありました。これらは新しい領土の開発を促すための流刑地の多様性を示し、刑罰として男性と女性、子供に強制労働させることによって、受刑者の更生にいたるまで多くの目的を持つ刑務所制度でもあったという点。

登録基準(vi)
18〜20世紀にかけて大国の犯罪者や政治犯を植民地へと移送するということは、刑罰、政治、植民地経営という点においては人類の歴史の重要な側面でもありました。オーストラリアの囚人遺跡群は、近現代の西欧社会での議論から導かれる価値観の例であり、それによってアボリジニにとっては彼らの土地が占拠されることになり、有罪判決を受けた入植者は懲罰から移送、強制労働による社会復帰へというルートは、西欧起源の植民地人口の増加への道筋になったということ。

世界遺産マニアの結論と感想

オーストラリアはもともとは流刑地であったというイメージがありますが、囚人遺跡はまさに流罪植民地として刑罰と入植という2つの側面を持つ18〜19世紀に生まれた新たな制度によって開拓されていったということを示すものです。しかし、この制度によってアボリジニの生活圏は減っていき、植民地における西欧人の人口が増えていったという側面もありました。

ちなみに、オーストラリアの有名ロックバンドAC/DCのボーカル、ボン・スコットは、少年時代に西オーストリア周のフリーマントル刑務所に「いろいろな罪」で収監されていたこともあり、ここは偉大なるスターを輩出した場所でもあります。…刑務所だけにあまり褒められたものではないですが。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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