登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3), (6) |
登録年 | 2015年 |
ヨルダン西部に位置するヨルダン川沿いにあるベタニア(アル=マグタス)は、かつてイエス・キリストが洗礼者ヨハネによって洗礼を受けたと信じられる場所。ここはヤバル・アル・エリアス(預言者エリヤの丘)と聖ヨハネの教会地区に分かれていて、教会や修道院跡などローマやビザンツ時代の遺構が残り、今でもキリスト教徒の巡礼地となっています。
ここでは洗礼の地「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」(アル=マグタス)がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ベタニアについて詳しくなること間違いなし!
洗礼の地「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」(アル=マグタス)とは?
イスラエルとの国境ともなっているヨルダン川。死海の北岸から北へヨルダン川沿いに約9km進んだ位置にあるベタニア(アル=マグタス)は、新約聖書に言及される「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」として、イエス・キリストが洗礼者ヨハネによって洗礼を受けた場所と信じられてきました。ここは旧約聖書に登場する預言者エリヤが天に上がったとされる丘「ヤバル・アル・エリアス」と、ヨルダン川沿いにある聖堂や洗礼が行われた池、巡礼者や隠者の住居の遺構が残る「聖ヨハネの教会地区」の2つで構成されています。
ここはローマ帝国以前から集落があったと考えられていますが、考古学的には遅くとも4世紀ころからキリスト教関連の施設の建設が始まったとされます。その後、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)によってヨルダン川東岸に洗礼者ヨハネにまつわる聖堂が建造。ここは洗礼が行われていた水場や、ヤバル・アル・エリアスの麓に存在した修道院、巡礼者・隠者が利用した洞窟など、かつての巡礼地だったことを示す痕跡が残っています。しかし、7世紀には破壊され、その後何回か再建されるも15世紀には廃墟に。20世紀に発掘が行われ、2002年には遺跡として公開されました。
洗礼の地「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」(アル=マグタス)はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ベタニアが評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」は、キリスト教において重要な洗礼の伝統を示す地で、この地は4世紀以降から洗礼が行われていたことを考古学的に証明しているという点。
登録基準(vi)
「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」は、キリスト教における洗礼の伝統と関連していて、さまざまな宗派にとって長期に渡って巡礼が行われた地であり、現在もこの地で洗礼が行われているということ。
世界遺産マニアの結論と感想
新約聖書に言及された「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」は、実際に4世紀からこの地で巡礼者たちによって洗礼が行われ続け、途中で放棄されたものの、洗礼遺跡として現在も残り続け、今でも巡礼者たちの洗礼が行われています。そして、これはキリスト教における「洗礼」という伝統のルーツを示す場所でもあるという点で評価。
ちなみにですが、世界遺産として登録されているベタニアはヨルダン川東側に位置しますが、6世紀以降は現在のイスラエル側にあるヨルダン川西岸に移動していて、現代は「カスル・エル・ヤフド」として有名な場所。こちらもアル=マグタスとして有名ですが、国境を越えているので世界遺産ではありません。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。