スペインの世界遺産「イビサ、生物多様性と文化」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分複合遺産
登録基準(2), (3), (4), (9), (10)
登録年1999年

スペイン東岸に浮かぶイビサ島は、現在はダンス・ミュージックで有名なリゾートですが、その歴史は古く、フェニキア人によって都市が築かれた集落がありました。「プッチ・フダス・ムリンス(風車の丘)」と呼ばれる墓地や、旧市街である「ダルト・ビラ(上の町)」はアラブ時代の町並みや城壁が残ります。近海にはポシドニア・オセアニカと呼ばれる海藻が自生し、モンクアザラシを含め地中海でも豊かな生態系が見られるのが特徴。

ここではイビサ、生物多様性と文化がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、 イビサ島について詳しくなること間違いなし!

目次

イビサ、生物多様性と文化とは?

エイビッサ(アイヴィーサ)/イビサ、生物多様性と文化
画像素材:shutterstock

イビサ島は、地中海西部のバレアレス諸島に属する島で、面積571.6平方kmという小さな島。ここはフェニキア人が紀元前7世紀に港を設立し、海上交易の拠点として繁栄しました。そして、島はローマ帝国、ヴァンダル人、ビザンツ帝国、イスラム勢力、アラゴン王国などの支配を経て、18世紀にはスペインの支配下になります。

文化遺産

サ・カレタ/イビサ、生物多様性と文化
画像素材:shutterstock

フェニキア人の考古学遺跡としては、島の南部にある「サ・カレタ」の集落跡と、西部に位置する「プッチ・フダス・ムリンス(風車の丘)」の墓地が登録され、これらはフェニキア人の国家カルタゴ(前814〜前146年)時代の遺構。これらは地中海の経済圏においてイビサが重要な役割を果たしたことを示すもの。

中心都市のエイビッサ(アイヴィーサ)には、「ダルト・ビラ(上の街)」と呼ばれる旧市街があり、ここはアラブ時代の町並みや城壁が残り、ルネサンス期の軍事建築の傑出した例です。これらは南北アメリカ大陸のスペイン人の植民都市の要塞建設に大きな影響を与えたもの。

自然遺産

イビサ島の南岸から約6kmの距離にあるフォルメンテーラ島の間にある海域が世界遺産に登録されていて、ここは地中海の盆地でしか見られない固有種ポシドニア・オセアニカと呼ばれる海藻が密集するエリア。ここはモンクアザラシなど豊かな生態系が見られます。

イビサ、生物多様性と文化はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

イビサ、生物多様性と文化
画像素材:shutterstock

イビサ島が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
イビサには16世紀に建造された要塞が残り、ルネサンスの軍事建築や工学、美点などが見られ、イタリアとスペインの建築様式が残る都市は、南北アメリカによける植民都市と要塞の建設において影響を与えたものであるという点。

登録基準(iii)
サ・カレタのフェニキア人の遺跡とプッチ・フダス・ムリンスの墓地は、西地中海のフェニキア人の植民地における都市化と社会生活が見られるもので、カルタゴ人の墓からは当時の暮らしなどが分かる資料が出土し、その規模が広く、重要度が高いということ。

登録基準(iv)
イビサの「ダルト・ビラ(上の街)」は、要塞化されたアクロポリスの優れた例で、その城壁と都市構造はフェニキア人の植民都市だった時代からアラブ、アラゴン王国、ルネサンス時代の要塞まで連続的に使用された跡が見られ、防御壁には初期構造や通路などがそのままのこされているということ。

登録基準(ix)
イビサ島の海岸は、沿岸と海洋の生態系の相互作用にポシドニアの影響が見られるという点。

登録基準(x)
地中海のほとんどの場所で絶滅の危機に瀕しているポシドニア・オセアニカが見られ、多様な海洋生物の暮らしを支えているということ。

世界遺産マニアの結論と感想

イビサ島の文化遺産は古くからフェニキア人が交易を目的に植民都市を築き、それらは遺跡や墓地から当時の暮らしが見られ、現在のエイビッサの旧市街であるダルト・ビラにはアラブからルネサンス時代まで使用されていた要塞が残り、これはスペインが新大陸に進出した後にモデル都市ともなったという点で評価されています。そして、自然遺産としては、地中海でも数少ないポシドニア・オセアニカの生息地であり、海洋生物が多く見られるというのもポイント。

ちなみに、島にはクラブが多くありますが、これは1980年代後半にセカンド・サマー・オブ・ラブというムーブメントの時代に、イギリスのDJやプロモーターたちが多く訪れてから拡大していきました。よって、別に島の人々がパーティー好きだったわけではなく、イギリスの若者たちによってもたらされた文化でもあります。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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