登録区分 | 自然遺産 |
登録基準 | (9) |
登録年 | 1993年 |
青森県と秋田県にまたがる白神山地といえば、ブナ林で有名ですね。これらは世界自然遺産に登録されていますが、白神山地はなぜ世界遺産に登録されているのでしょうか?意外と知ってそうで知らない!
ここでは、今回は白神山地がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、白神山地について詳しくなること間違いなし!
世界遺産・白神山地とは?場所はどこにある?
白神山地は、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる広大なエリアで、東アジア最大のブナの原生林が残る場所。ここは標高100m〜1243mの山岳地帯で、世界遺産に登録されているのは総面積1300平方kmの中の約169.71平方kmの範囲。
ブナは北米やヨーロッパ、東アジアにも分布。北米やヨーロッパのブナは最終氷河期にはツンドラ地帯になったため、ブナの生息地は減少してしまったのですが、日本のブナは日本列島の南部にそのまま残されたことから氷河期が終わった後の回復も早く、1万2000年から8000年前には現在の分布域になっています。ヨーロッパのブナ林でさえ約2000年前に現在の分布域となっていて、白神山地はヨーロッパのブナ林よりも5〜6倍も多様な植生が見られるというのが特徴。
十二湖/青池も世界遺産に登録されている?
十二湖は、白神山地の中でも西部のブナ林に点在する33の湖沼の総称。その数は33もあるものの、標高940mの崩山(くずれやま)から眺めると、12の湖沼が見えたために十二湖と呼ばれます。その歴史は意外にも浅く、1704年に発生した大地震によって形成されたと考えられているもの。
最も有名なのが、コバルトブルーに輝く「青池」。透明度が高く、倒木して沈んだブナの木がはっきりと見え、神秘的な空間が広がっています。ここはブナ林が密集し、水分の含有量が多いため、まるでダムのように広大な湖がいくつも形成されていて、それぞれの湖沼はトレッキングコースで繋がっています。
スタジオジブリの『もののけ姫』の舞台となった?
『もののけ姫』は架空の物語ではあるので、劇中で登場する地名もすべて架空。とはいえ、白神山地を「大いに参考にした」スポットとなっています。主人公であるアシタカが住む村は「エミシ」と呼ばれますが、そもそもエミシとは「蝦夷」から由来するとされていて、当時の大和朝廷では東国や北海道をこのように呼んでいました。特にアジアにおいても古いブナ林が残り、作品のイメージともぴったり。
白神山地はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
白神山地が評価されたのは以下の点。
登録基準(ix)
白神山地は、ブナの原生林が全体の3分の1を占め、ここは氷河期を生き残り、急傾斜が入り組んだ地形にブナの純林が残っていて、東アジアでは他で例を見ない規模になっています。そして、ブナ林の北限であり、日本固有種のブナ(シロブナ)だけでなく、クマゲラやニホンカモシカなどの貴重な生物が住み、これは気候変動の歴史を示していて、ユーラシア大陸のブナ林の生態系の進化過程を示す地でもあるということ。
つまり、
「ユーラシア大陸において、どのブナの原生林よりも古く、東アジア最大のブナ林であり、その手付かずのブナ林がそのまま残っている」
ということですね。
白神山地の構成資産をご紹介
1、ブナ林
日本のブナは約100万年前に誕生したとされ、最終氷河期前までは日本全国にブナ林があったと考えられていますが、その頃には減少し、南部にだけ残ったため、最終氷河期が終わると、ブナ林は急速に発展して北上し、この地にもブナ林が広がるようになったのです。
しかし、日本のブナは多くが伐採され、どのブナ林も人工林や二次林となったのですが、白神山地は人里離れた秘境にあったため、天然林が残されたという背景があります。
2、植生
白神山地は、日本固有種のブナ(シロブナ)の生息地で、植物相も豊富。固有種としてはアオモリマンテマなどが見られ、希少種が多く生息しています。
ここは氷河期に氷で覆われなかったことから「日華植物区系(日本列島や中国、ヒマラヤ山脈における植物分布)」に属する植物が大部分を占めています。
3、動物
白神山地の原生林には貴重な哺乳類、鳥類、昆虫なども生息。特に東北地方の哺乳類はほぼすべて生息するというほど豊かなブナ林でもあります。特別天然記念物のニホンカモシカがここで生息していることでも有名。
キツツキの種類が多いことで有名で、天然記念物のクマゲラが見られ、他にも絶滅が危惧されているイヌワシなども生息。
世界遺産マニアの結論と感想
白神山地は、東アジア最大のブナ林が見られ、ヨーロッパブナに比べるとその歴史は古い上に、人間が足を踏み入れることが少なかったことから、天然林が残るという貴重なエリアです。そして、植物・動物ともに貴重な種が多く見られ、ブナ林の生態系をよく見られるという点で評価。
白神山地は寒冷地帯であるために、この地で進化した酵母菌が「生存競争を勝ち抜いてきた強い種」であるということで、耐冷性や発酵力がかなり強いということで注目を浴びています。そして、それらは天然甘味料やパンの製造において幅広く活用されているということもあり、我々の生活においても大いに役立っているのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。