セルビアの世界遺産「スタリ・ラスとソポチャニ」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(1), (3)
登録年1979年

セルビア南西部にある都市ノヴィ・パザルの郊外にはセルビア王国(1171〜1346年)の最初の首都であったスタリ・ラスの都市遺跡があります。その近くにあるソポチャニの修道院は13世紀に建造され、フレスコ画の『生神女の就寝』で有名で、西欧と東欧の融合が見られるもの。さらにノヴィ・パザルの近くにはセルビア最古の教会である聖ペテロ教会もあり、この地は文化の中心地でもありました。

ここではスタリ・ラスとソポチャニがなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、スタリ・ラスとソポチャニについて詳しくなること間違いなし!

目次

スタリ・ラスとソポチャニとは?

スタリ・ラス

スタリ・ラス
画像素材:shutterstock

セルビア南西部ラシュカ群にあるノヴィ・パザル。西欧と東欧の中間地帯でもあるセルビアは、7世紀には南スラヴ人の一派であるセルビア人が進出すると、9世紀に東ローマ帝国と接触し、キリスト教を受け入れました。そして、ノヴィ・パザルの西部に位置するシュカ川とセベチェヴォ川の合流点にはラスと呼ばれる都市が建造され、12世紀になるとセルビア王国の首都となりました。

ここは城壁で囲まれていて、内壁には王宮や聖堂などが存在していましたが、13世紀には居住地が放棄されると、その後は荒廃し、現在は遺構のみが残っています。

ソポチャニ修道院

ソポチャニ修道院
画像素材:shutterstock

スタリ・ラスの南西に位置する修道院。ここは1260年にセルビア王ステファン・ウロシュ1世(1223〜1277年)によって建造。内部には、ビザンツ美術の影響を受けたセルビア美術の傑作が並び、特にフレスコ画が多く、『生神女の就寝(聖母の眠り)』があることでも有名。

ここは16世紀になるとオスマン帝国の侵攻によって衰退し、17世紀に屋根などが破壊されたため、修道院は放棄されてしまいます。20世紀になると建造物が修復され、フレスコ画も当時の姿を取り戻しました。

聖ペテロ教会(聖ペトル聖堂)とネクロポリス

聖ペテロ教会(聖ペトル聖堂)とネクロポリス
画像素材:shutterstock

ノヴィ・パザルの北側に残る聖堂で、6世紀には洗礼堂が存在していたとされますが、現在の建造物は10世紀頃に建造されたもの。これはセルビア最古というだけでなく、バルカン半島でも最古のキリスト教会でもあるのが特徴。内部にはフレスコ画が残り、この地で10〜14世紀にかけて芸術が発展した証拠でもあります。

スタリ・ラスとソポチャニはどんな理由で世界遺産に登録されているの?

ソポチャニ修道院
画像素材:shutterstock

スタリ・ラスとソポチャニが評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
ソポチャニ修道院に残るフレスコ画は、創設者たちの歴史的な記録という面もありますが、これは13世紀の十字軍によって支配されたコンスタンティノープル(現イスタンブール)の時代に発展したビザンツ美術を今に残すもの。ノヴィ・パサル近郊のジュルジェヴィ・ストゥポヴィ修道院に残るフレスコ画は古代の芸術からインスピレーションを受け、人物をイコンのように描くという点が独創的。この地方の司教座である聖ペテロ教会にも美しいフレスコ画が残っているという点。

登録基準(iii)
スタリ・ラスの遺跡は、東欧と西欧の交差点であることから両方の影響を受けて発展し、9〜11世紀に建造されたラシュカ派と呼ばれる独特の建造物が並び、ここがセルビア王国の首都として繁栄したということを物語っているということ。

世界遺産マニアの結論と感想

スタリ・ラスは、現在は遺跡となってはいるものの、ここはセルビア王国の首都として繁栄した足跡が残り、ソポチャニ修道院に残るフレスコ画はビザンツ美術においても傑作であり、聖ペテロ教会やジュルジェヴィ・ストゥポヴィ修道院のフレスコ画も独創的で美しいという点で評価されています。

ちなみに、ノヴィ・パザルは「新しい市場」という意味で、スタリ・ラスが放棄された後、人々がここに住みはじめ、交易の町として発展しました。実はラスが廃れたのは、通商ルートや交易路から外れていたたために、単純に居住地がこちらに移動したと考えられています。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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