登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1), (2), (4) |
登録年 | 2017年 |
ポーランド南部の上シレジア地方にある都市タルノフスキェ・グルィの地下には、鉛や銀、亜鉛の鉱山が存在していて、坑道や立坑、地下水管理システムを含めて世界遺産に登録。ここは16世紀から地下の採掘場から水を組み上げ、それを地上の街や工場で再利用できるように3世紀に渡って管理されているもの。
ここではタルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山とその地下水管理システムなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、タルノフスキェ・グルィについて詳しくなること間違いなし!
タルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山とその地下水管理システムとは?
ポーランド南部の上シレジアは古くから鉱物の採掘地域で、シロンスク県タルノフスキェ・グルィは、16世紀から鉛の供給源の方鉛鉱と銀が採掘されてきました。ここには水平の坑道と竪穴などが多く築かれ、標高270〜300mの緩やかな高原に位置するという珍しい鉱山で、他のヨーロッパの鉱山に比べて約3倍の量が流入するという特殊な事情がありました。
タルノフスキェ・グルィには合計で50km以上の排水トンネル、150km以上の排水溝などが存在します。そのため、地下水の管理システムが地上と地下にまたがっていて、地下から組み上げ、不要な水は街や工場などに再利用できるという仕組み。18世紀になると、蒸気機関によって水の問題が解決され、地下の鉱床を採掘できるようになりました。しかし、20世紀になると枯渇してしまい、1913年には廃坑。現在は博物館として、ガイド付きツアーなどで坑道の中を巡ることも可能です。
タルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山とその地下水管理システムはどんな理由で世界遺産に登録されているの?
タルノフスキェ・グルィが評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
鉱山の地下水管理システムは、人類の卓越した技術と応用力の卓越した証拠で、ここは16世紀後半から19世紀後半にかけて水力学の傑作でもあります。タルノフスキェ・グルィは世界初ともいえる水供給システムが見られ、蒸気機関によって地下水の組み上げに基づく、当時の排水におけるヨーロッパの技術の最高峰であったという点。
登録基準(ii)
鉱山の地下水管理システムは、ドイツのザクセン州、チェコのボヘミア、イギリス、ポーランドの主要な鉱山や工業地帯の鉱学や公共の水道供給システムに関する技術・アイデア、知識の交流を示すもの。これにより、飲料水と工業用水を地域全体に再分配できるという水管理システムとともに、重力による地下鉱山の排水ネットワークが構築できるようになりました。ここでの技術的成果によって、タルノフスキェ・グルィはシレジアの産業における知識のホットスポットとなり、このシステムは当初の設計のまま機能し、現在も市民の飲料水を供給しているという点。
登録基準(iv)
地下水管理システムは、金属の採掘と水の管理における技術の集合体であり、当時の世界において建築物や冶金の素材の供給源であった鉛と亜鉛の採掘エリアと、鉱山からの排水を目的とした地下水管理システムの2つに区分されるもの。これは重力などを利用して運用されたヨーロッパ最大の供給地で、ポーランドでも最も工業化と都市化が進んだエリアでもあるという点。
世界遺産マニアの結論と感想
タルノフスキェ・グルィは、平地にある鉱山であるために排水に関してはずっと悩まされていました。そのため各地の鉱山や水管理システムの技術の交流が見られ、地下水を飲料水と工業用水に利用できるというシステムが築かれたというのが特徴。当時のヨーロッパにおいて重要だった鉛と亜鉛の供給源でもあり、ここはポーランドでも最も工業化と都市化が発展したエリアであったという点で評価されています。
ちなみに、シレジア県は今でも工業地帯で、首都ワルシャワのあるマゾフシェ県の次に人口が多いエリア。そして、意外にも人口密度はポーランド一ということで、これは古くから産業が盛んであるという証拠でもありますね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。