オーストリアは、ヨーロッパ大陸のほぼ中央に位置し、首都ウィーンはかつて大帝国を築いたハプスブルク家の本拠地でもありました。芸術と音楽が発展した国で、世界遺産にもその要素が見られますが、オーストリアには世界遺産がいくつあるでしょうか?
ここでは、オーストリアの世界遺産を世界遺産マニアが一覧にして分かりやすく解説。それぞれの遺産を簡潔に解説していきましょう。
目次
ザルツブルク市街の歴史地区
ザルツブルクは、ドイツの国境近くにあるザルツブルク州の州都。「ザルツ(塩の)ブルク(城)」と名前からも、ここは岩塩の採掘と交易で栄えた都市。7世紀に司教座が置かれると、8世紀には大司教座となり、旧市街には教会や修道院などが築かれました。
現在のザルツブルクは、バロック様式の美しい教会や建築物が並んでいます。そして、モーツァルトの出身地でもあり、音楽の都としても有名。
詳細はこちら↓
シェーンブルン宮殿
首都ウィーン中心部から南西へ約7km。シェーンブルン宮殿は17世紀後半から20世紀初頭まで中央ヨーロッパを支配したハプスブルク家の居城だった場所。ここは18世紀から1918年までハプスブルク家の皇帝が住む宮殿でした。
テレジア・イエローの外観はバロック様式で、装飾のほとんどがロココ様式。宮殿と庭園が織りなす景観は「総合芸術作品」を代表するものです。
詳細はこちら↓
ザルツカンマーグート地方のハルシュタットとダッハシュタインの文化的景観
ザルツカンマーグートは、アルプス山脈の中でも東側に位置していて、深い峡谷や山々に囲まれた地。ハルシュタットは「塩の場所」という意味で、なんと紀元前2000年から採掘されていたというほど。16世紀からオーストリアのハプスブルク家が支配し、ここで採掘される塩はハプスブルク家の重要な財源となりました。
ダッハシュタインはハルシュタットの南側に広がる標高2995mの山で、多くの氷河に囲まれていて、ここには氷河によって形成された氷穴や洞窟が点在。
詳細はこちら↓
ゼメリング鉄道
ゼメリング鉄道は、ウィーンから南西へ100kmほどの距離にあるグロッグニッツ駅からゼメリング峠を経由し、スキーリゾートの基点であるミュルツツーシュラーク駅に至るまでの鉄道路線。路線名の由来となったゼメリング峠は標高995mもあり、難所でもありました。
鉄道は1848〜1854年に41.8kmもの山々の間を通るように建設され、トンネルや高架橋などの当時最先端の土木工学を駆使して開通したもの。この路線は今でも現役であります。
詳細はこちら↓
グラーツの市街-歴史地区とエッゲンベルク城
オーストリア南東部のシュタイアーマルク州の州都であるグラーツは、新石器時代まで遡るほどに古い歴史を誇る都市。現在のグラーツの歴史は10世紀に始まり、15世紀にハプスブルク家出身の神聖ローマ皇帝であったフリードリヒ3世がここに王宮を作り、首都としました。
郊外にあるエッゲンブルク城は、ハプルブルク家によって築かれた城で、美しい装飾やインテリア、庭園などが見られます。
詳細はこちら↓
ヴァッハウ渓谷の文化的景観
首都ウィーンから西に約80km。クレムスからメルクまでの約35kmのドナウ川流域一帯が登録されています。渓谷には壮麗な修道院や城、遺跡などが点在し、ドナウ川を利用してぶどう畑も作られるなど、先史時代から人々が生活していたという証拠が残るという点で評価されています。
詳細はこちら↓
ウィーン歴史地区
首都ウィーンは、現在のオーストリア東部のドナウ川沿いに位置する都市で、ローマ時代の都市ウィンドボナが起源。やがてハプスブルク帝国の首都になり、「音楽の都」として16世紀以降は多くの音楽家を輩出しています。
市内には中世に築かれたものからバロック様式、ネオ・ルネサンス様式の壮麗な建築物が今でも多く並んでいます。ハプスブルク家の繁栄と同時に街は発展し、特にバロック様式の宮殿や庭園など、当時の栄華が見られる壮麗な建物が点在。
詳細はこちら↓
フェルテー湖/ノイジードル湖の文化的景観
オーストリアとハンガリーの国境に広がるフェルテー湖/ノイジードル湖。ドイツ語でノイジードル湖、ハンガリー語でフェルテー湖と呼ばれる塩湖はオーストリアとハンガリーの国境に広がっています。そのうち北部の240平方kmはオーストリア領で、南部の75平方kmがハンガリー領。
ここは古くから異文化が交わる地であり、湖の周囲には田舎風の貴族の館や、18〜19世紀のハンガリーの宮殿風の館など、湖と合わさった文化的景観が広がっています。
詳細はこちら↓
カルパティア山脈とヨーロッパ各地の古代及び原生ブナ林
ヨーロッパブナは、北はスウェーデン南部から南は地中海岸、西はポルトガル、東はトルコまで広がっていて、氷河期後期には、ヨーロッパの約40%はヨーロッパブナ(ファグス・シルヴァティカ)の林が広がっていました。登録エリア各地にはブナの原生林が広がっていて、ヨーロッパブナの原生林としては世界最大の規模を誇ります。
オーストリアとしての登録範囲は、カルカルペン国立公園の4箇所とデュレンシュタイン山。
詳細はこちら↓
アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群(スイス、イタリア、ドイツ、フランス、スロヴェニアと共同)
スイス、イタリア、ドイツ、フランス、オーストリア、スロヴェニアと、アルプス山脈周辺の6ヶ国には、紀元前5000〜500年の先史時代に湖や河川、湿地帯に杭上住居跡が111箇所も残り、これらは水没していたために保存状態が非常に良好。
オーストリアには、5件の杭上住居群が登録されています。
詳細はこちら↓
ローマ帝国の国境線-ドナウのリーメス(西部分)(ドイツ・スロヴァキアと共同)
ローマ帝国の北方の国境であったドナウ川沿いには、リーメス(長城)が建設され、見張り台や砦、軍駐屯地などを徐々に加わえ、強化されていきました。もともとのリーメスは土の堤防だけ築かれたものでしたが、2世紀のトラヤヌス帝の時代になると石で囲まれるようになったのです。
ドナウ川沿いのローメスは、西は現在のドイツのバイエルン州からオーストリア、スロヴァキア、ハンガリーを通り、ルーマニアまでに至る壮大なもので、西部分が世界遺産が登録。
詳細はこちら↓
ヨーロッパの大温泉保養都市群(ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスと共同)
ヨーロッパ各地には無数の温泉地がありますが、7カ国11箇所の温泉地が世界遺産に選ばれています。これらは1700年頃から1930年代に繁栄した国際リゾート地で、この頃のヨーロッパの温泉街の中でも特に発展した都市でした。
オーストリアで登録されているのは「バーデン・バイ・ウィーン」。ここはオーストリア北東部にある温泉地で、硫黄泉が湧くことから古代ローマ時代にはすでに温泉地だったいうほどに歴史の深い保養地です。
詳細はこちら↓
世界遺産マニアの結論と感想
オーストリアは、単体の世界遺産としては7件だけですが、他国と共同のものを含めると文化遺産が11件、自然遺産が1件と合計で12件の世界遺産が登録。モーツァルトの出身地だけあって、音楽関連だけではなく、ハプスブルク家の繁栄が見られる遺産が多いのが特徴ですよ。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。