スペインの世界遺産「バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(2), (4)
登録年2000年

スペイン北東部のピレネー山脈の高地であるバル・デ・ボイ(ボイ渓谷)は山々に囲まれていて、9つの村にはそれぞれロマネスク様式の教会が残っています。ここはイスラム勢力に侵略を受けなかったため、保存状態は良好。1123年にタウル村に築かれたサン・クリメン教会には美しいフレスコ画が残っています。

ここではバル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、バル・デ・ボイについて詳しくなること間違いなし!

目次

バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群とは?

コル集落の聖母被昇天聖堂/バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群
画像素材:shutterstock

イベリア半島の北東にあるピレネー山脈。険しい山脈の南側にあるカタルーニャ州リェイダ県には、バル・デ・ボイ(ボイ渓谷)があり、各村にはロマネスク様式の教会が残っています。9世紀になると、ムーア人(イスラム教徒)はイベリア半島のほとんどを征服しましたが、ピレネー山脈を越えることができず、この地域の村々は11〜12世紀にかけて当時の北イタリアから影響を受けてロマネスク様式の教会が築かれ、内部には美しいフレスコ画が存在しました。

ヨーロッパでもこれだけのロマネスク様式の教会が短期間に集中して建造された場所は非常に稀でもあります。これらは12世紀にカタルーニャ地方の伝統文化が見られ、自然環境と調和した文化的景観が広がるというのが特徴。世界遺産としてはボイ村のサン・ホアン教会やカルデ村のサンタ・マリア教会など、9つの村に鐘楼が加えられた教会が残っています。これらは中世カタルーニャのアイデンティティとも繋がっていき、20世紀初頭の民族運動にも重要な役割を果たしました。

タウル村のサント・クリメント教会

タウル村のサント・クリメント教会/バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群
画像素材:shutterstock

1123年に献堂されたバル・デ・ボイの教会の中でも最大規模の教会。ここはロマネスク様式の典型的な建築様式で、3つの身廊があるバシリカ式の聖堂となっていて、半円ドームの後陣が付属しています。鐘楼は6階建てとなっていて、各階にアーチ型の窓が配置されているというもの。

後陣に描かれた全能者ハリストス(イエス・キリスト)のフレスコ画は、ロマネスク美術の傑作の一つで、現在はバルセロナのカタルーニャ美術館にて保管されています。

バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

タウル村のサント・クリメント教会/バル・デ・ボイのカタルーニャ風ロマネスク様式教会群
画像素材:shutterstock

バル・デ・ボイが評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
バル・デ・ボイに残る教会は、ロマネスク様式の芸術と建築がこの地で発展したことを示し、中世ヨーロッパ全体、特にピレネー山脈を越えた文化交流を証明するという点。

登録基準(iv)
バル・デ・ボイの教会は、古来より変わらない田園地帯にあるロマネスク様式の芸術がそのまま残ったという例であるということ。

世界遺産マニアの結論と感想

バル・デ・ボイの教会は、ピレネー山脈を越えて、中世ヨーロッパの文化交流がここで発展したことを示し、ロマネスク様式の芸術作品が現在でもそのまま残っているという点で評価されています。

ちなみに、リェイダ県の県都のリェイダは、美食の街として有名。日本でもおなじみ、カラコレス・ア・ラ・ジャウナと呼ばれるカタツムリ料理が食べられるのはここです。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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