登録区分(暫定リストに記載) | 複合遺産 |
登録基準(暫定リストに記載) | (2),(3),(4),(10) |
申請年(暫定リストに記載) | 2014年 |
モンゴル西部の国境沿いに広がるアルタイ山脈は、高山地帯の険しい地で、ここには希少な動物や絶滅危惧種が多く生息しています。そして、後期石器時代から人々が暮らす地であり、遊牧民のルーツ的存在でもあるアルタイ山脈のスキタイ人の墳墓などが発掘。現在もこの地には遊牧民が暮らし、それらの遺跡も含めて文化的景観が広がっています。
ここではモンゴル・アルタイ高原群がなぜ世界遺産候補なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、モンゴル・アルタイ高原群について詳しくなること間違いなし!
モンゴル・アルタイ高原群とは?
自然遺産
アルタイ山脈は、中央アジアとシベリアの交差点に位置していて、モンゴルの西部のバヤン・ウルギー県とホブド県にまたがって約900kmにも渡って続いています。ここにはモンゴル最高峰タワン・ボグド(標高4374m)を含んでいて、4000m級の山々が続き、ここはカザフスタンとロシアに比べると、盆地と乾燥した草原が広がるというのが特徴。
世界遺産としては、北部のアルタイ・タヴァン・ボグド国立公園は、南部のシルケム山国立公園の2箇所。アルタイ・タヴァン・ボグド国立公園は、モンゴル最高峰が続き、古代湖が多く点在するエリア。ここは渓谷や草原などに、アルガリやアイベックス、アカシカ、ミズナギドリ科のユキドリ、イヌワシなどが暮らしています。シルケム山国立公園は、平均標高2500〜2750mの険しいエリアで、絶滅危惧種のユキヒョウなどの生息地の一つとして有名。
文化遺産
アルタイ高原は生物多様性で有名である一方、後期旧石器時代からテュルク語系の民族が繁栄する時代まで、さまざまな文化が重なり合う地。これらはスキタイ人(紀元前7世紀〜紀元前3世紀頃に黒海やカスピ海北部を支配した遊牧民)の墳墓群や、鹿のデザインで覆われた鹿石、数百の石碑とヘレクスル(積石塚)などが残っています。
ちなみに、緩衝地帯には2011年に登録された「モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群」も含まれています。
モンゴル・アルタイ高原群はどんな理由で世界遺産に登録される予定なの?
モンゴル政府が提出した暫定リストに記載されている登録基準としては、以下の点。
※これらは2014年に暫定リストに記載された、モンゴルにおける基準です。
登録基準(ii)
モンゴル・アルタイ高原の文化的景観は、遊牧の文明と定住の文明の両方の文化や、芸術、経済、政治の交流を示す例です。特にスキタイ人の埋葬施設は重要で、そこには墳墓のデザインや構造、工芸品が見られ、アケメネス朝ペルシャ(現在のイランを中心に支配した王朝)やギリシャ、古代中国といった定住文化と、遊牧民の文化の影響を明らかにしているという点。
登録基準(iii)
モンゴル・アルタイの高原の文化的景観は、アルタイ山脈で繁栄したスキタイ人の埋葬文化を証明していて、墳墓で発掘された工芸品は騎馬民族の伝統が黒海からこの地に至るまで広まり、彼らの伝統と生活習慣を証明するもの。そして、現在この地にで暮らす、モンゴル人やカザフ人、テュルク系民族の文化的伝統はスキタイ人の時代の遊牧民にルーツを持つということ。
登録基準(iv)
モンゴル・アルタイ高原の遺産は、古代から現在に至るまでアルタイ山脈で人類が暮らしてきたことを示す証拠であり、旧石器時代から青銅器時代の人々から、スキタイ人、フン族、テュルク人、ウイグル人、モングル人といった歴代の遊牧民とその帝国が残した考古学遺跡によるもの。過去3000年に渡る人類の歴史がこの地の遺跡と文化が組み合わさり、独特の文化的景観を作り出したという点。
登録基準(x)
モンゴル・アルタイ高原群には、さまざまな生息地があり、生物多様性と固有種が発生する土壌となり、希少種や絶滅危惧種が暮らしています。ここには絶滅危惧種のユキヒョウやオオヤマネコだけでなく、アルガリやアイベックス、さまざまなネコ科の希少な動物が見られるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
モンゴル・アルタイ高原群は、周辺の大国の文化の影響を受け、アルタイ山脈で繁栄したスキタイ人の埋葬文化がわかる遺産など、現在もこの地で暮らす遊牧民の文化や伝統との繋がりが見られます。そして、険しい山脈を含める草原が広がっていて、固有種や絶滅危惧種も暮らしているという点で評価されています。
ちなみに国境を越えてロシア連邦のアルタイ共和国には、ウコク高原と呼ばれる草原が広がっていて、ここは「アルタイの黄金山地」として世界遺産に登録。1956年に考古学者が発見した「アイス・プリンセス」と呼ばれる永久凍土から発見された紀元前3世紀ころのミイラが発見されているのですが、これはモンゴル側のスキタイ人との関連性が見られるもの。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。