イヴァン雷帝(イヴァン4世、1530〜1584年)はモスクワ大公国の大公から初代ツァーリへとなった人物。「雷帝」の意味は「恐怖を与える」「厳格」という意味で、彼はロシア史上最大級の暴君である一方、多くの領土を獲得したため、後の帝政ロシアの繁栄へと繋げたという功績もあります。そんなイヴァン雷帝とはどういった人物だったのでしょうか?
今回はイヴァン雷帝がどんな人物だったかを世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、イヴァン雷帝について具体的に理解できること間違いなし!
イヴァン雷帝(イヴァン4世)とはどんな人物?

イヴァン4世がモスクワの大公についたのは1533年、3歳の時でした。1547年に正式に「全ルーシのツァーリ」を名乗り、それまでモスクワの大公からロシアのツァーリ(皇帝)としての地位を確立しました。これにより、ロシアはモスクワ大公国から中央集権的な国家へと発展。
彼は1552年にカザン・ハン国や、1556年にはアストラハン・ハン国を征服し、ロシア領土を東方のヴォルガ川流域まで広げました。さらに、シベリアへの進出を開始し、ロシアの拡張政策の基礎を築きます。



1565年から1572年にかけて「オプリーチニナ」と呼ばれる恐怖制度を展開。これは、貴族を抑圧し、中央集権化を進めるための政策で、ツァーリ直属の親衛隊「オプリーチニキ」による粛清が行われました。結果として多くの貴族や市民が処刑され、1570年にはノヴゴロドの虐殺などが発生し、ツァーリの人気は下がっていきます。
彼はバルト海への進出を目指し、リヴォニア(現在のエストニア、ラトビア周辺)を巡って戦争を行うもほぼ領土は獲得できず、ロシアは西方への進出に失敗してしまいます。晩年は猜疑心が強まり、激しい暴力をふるうようになり、1581年には怒りのあまり長男イヴァンを殺害。やがて精神が不安定になり、1584年に死去しました。
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ポクロフスキー大聖堂(聖ワシリイ大聖堂)/ロシア



モスクワの中心・クレムリン周辺には多くの市場が作られましたが、その中でも東側の城壁の近くにある赤の広場は、15世紀に整備されたものが起源。
ポクロフスキー大聖堂は1551〜1560年にかけて、イヴァン4世によって建造された大聖堂。中央の主聖堂の周りに、8つのドーム型の玉ねぎ型の小聖堂が囲むという構造になっています。当初は「生神女」のための大聖堂でしたが、ワシリイという「佯狂者(正教会における聖人)」の小聖堂があることから聖ワシリイ大聖堂と呼ばれるようになりました。
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カザン・クレムリンの歴史的・建築的複合体/ロシア



タタールスタン共和国の首都カザン。カザンカ川とヴォルガ川が合流する丘の上に築かれたのが、カザン・クレムリン。15世紀になると、テュルク系のイスラム王朝であるカザン・ハン国によって宮殿が築かれると、ここは経済と文化の中心地となりました。
しかし、1552年にイヴァン雷帝によって征服されると、クレムリンは19世紀までキリスト教の建造物が築かれていきます。
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スヴィヤジツクの集落島の生神女就寝大聖堂と修道院/ロシア



スヴィヤジツクは、ヴォルガ川とスヴィヤ川の合流点に位置し、ここはシルクロードとヴォルガ川の交易ルートの中間点でもありました。現在の周囲は貯水池に囲まれていて、集落はまるで島のようになっていますが、土手の道で繋がっています。
ここは1551年にイヴァン雷帝が、カザン・ハン国を征服するためにここを前哨基地として設立。彼は征服した地域に対してキリスト教の伝道と行政を目的として、街の中心部に生神女就寝修道院を建造しました。
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セルギエフ・ポサードの至聖三者セルギイ大修道院の建造物群/ロシア



モスクワから北東へ約70kmもの位置にある宗教都市セルギエフ・ポサード。ポサードとは「門前町」という意味で、セルギエフとは、14世紀の貴族出身の修道士セルギー・ラドネシスキー(ラドネジの克肖者聖セルギイ)が由来。彼がここに木造聖堂を建造したことが修道院のルーツでもあります。
16世紀には、イヴァン雷帝によって、修道院最大の大きさを誇る生神女就寝大聖堂(ウスペンスキー聖堂)が建造され、全長1.4kmもの城塞も加わり、大修道院になりました。
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世界遺産マニアの結論と感想
イヴァン4世は「イヴァン雷帝」と呼ばれ、ロシアの領土拡大と中央集権国家の形成に貢献した一方で、圧政と粛清によって国力を衰退させた人物でもあります。彼の死亡した後は「動乱時代(スムータ)」と呼ばれる不安定な時代を引き起こすものの、その苛烈な支配体制は独裁者でもあったスターリンには大いに参考になったとされます。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。