エジプトの世界遺産「アブ・シンベル神殿」とは?引っ越しも含めて世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(1),(3),(6)
登録年1979年

アブ・シンベル神殿は「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」の構成資産の一つ。エジプト南部の国境近くにある巨大な神殿であり、これは第19王朝のファラオであった征服王・ラムセス2世の権威を示すもの。ところで、アブ・シンベル神殿はなぜ世界遺産なのでしょうか?

ここではアブ・シンベル神殿がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、アブ・シンベル神殿について詳しくなること間違いなし!

目次

アブ・シンベル神殿とは?左から2番目の像はなぜ破壊された?

エジプトの最南端にあるナセル湖に位置するアブ・シンベル。ここはエジプト新王国時代、第19王朝のラムセス2世(紀元前1303年頃〜紀元前1213年頃)によって建造したアブ・シンベル神殿があることで有名。神殿は紀元前1264年頃から約20年かけて建造されたと考えられ、大神殿と小神殿の2つに分かれています。

大神殿

アブ・シンベル大神殿
画像素材:shutterstock

大神殿の入口には、高さ22mもある4体のラムセス2世の像が並んでいて、その間には母や王妃、息子、娘の像が彫られています。正面左から2体目の像は地震により崩壊したもので、破壊されたものではありません。また、神殿内にも多くのラムネス2世の像が掘られていて、彼の功績である「カデシュの戦い(紀元前1286年頃)」で活躍する姿が壁画に描かれています。

小神殿

アブ・シンベル小神殿
画像素材:shutterstock

大神殿から北に120m離れた場所には小神殿が築かれていて、これは愛と美の女神であるハトホル神と、ラムセス2世の王妃ネフェルタリ(不明~紀元前1225年頃)に捧げられた神殿です。ちなみに、正面には6体の像がありますが、4体がラムセス2世で2体はネフェルタリ。

実は神殿は引っ越しをしている?

アブ・シンベル神殿
画像素材:shutterstock

神殿は砂漠地帯にあるために、少なくとも6世紀には神殿は先端部分以外はすべて砂に埋まってしまいました。そして、1813年にスイス人の旅行家であるブルクハルトによって発見され、1817年にイタリア人探検家ベルツォーニによって神殿の入口が発見されます。

1960年代になるとアスワン・ハイ・ダムの建設計画により、移設されることになりました。現在の神殿は、もともと遺跡があった場所から北へ60m先の丘の上へ移動したもの。建築物は細かく分断され、1968年に工事は終了。かつての神殿跡地は、人造湖であるナセル湖に沈んでいます。

1年に2回、太陽の光が神殿の奥まで照射される?

アブ・シンベル神殿
画像素材:shutterstock

神殿の奥には太陽神であるアメン・ラー神、ラー・ホルアクティ神、メンフィスの守護神であるプタハ神、ラムセス2世の像が置かれています。これは1年に2回入口から太陽が当たるように設計していて、10月22日と2月22日の2日だけ光が当たり(現在は翌日)、その現象を見ようと多くの観光客が訪れることでも有名。

ちなみに、それぞれ王の誕生日と即位の日であり、ラムセス2世の力は神と同列ということを示したかったのだろうと考えられているものの、根拠はありません。

アブ・シンベル神殿はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

アブ・シンベル神殿
画像素材:shutterstock

アブ・シンベル神殿が評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
ヌビアの遺跡群は、人類の創造的資質を示しているということ。

登録基準(iii)
ヌビア地方に点在する遺跡は、かつてヌビア地方までエジプト文明が領土を広げていたという証拠であるということ。

登録基準(vi)
「ヌビア水没遺跡救済キャンペーン」が世界遺産設立のきっかけになったということ。

世界遺産マニアの結論と感想

アブ・シンベル神殿は、外征を多く行ったラムセス2世が、ヌビア地方まで征服していたことを示し、この神殿の移設問題が「世界遺産」設立のきっかけになったという点で評価されています。

ちなみに、現在のアブ・シンベル神殿の外観は砂の台地に見えますが、内部はコンクリート製のドームとなっていて、遊園地のアトラクションのようでちょっと雰囲気がないかもしれません。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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