奈良県の世界遺産候補「飛鳥寺跡」とは?飛鳥大仏を含めて世界遺産マニアが解説

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登録区分(暫定リストに記載)文化遺産
登録基準(暫定リストに記載)(2),(3),(4),(5),(6)
申請年(暫定リストに記載)2007年

飛鳥寺は「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の構成遺産の一つ。ここは日本初の本格的仏教寺院で、日本最古級の仏像である「飛鳥大仏」があることでも有名。ところで、飛鳥寺はなぜ世界遺産候補なのでしょうか?

ここでは飛鳥寺がなぜ世界遺産候補なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、飛鳥寺について詳しくなること間違なし!

目次

飛鳥寺とは?その歴史を解説

飛鳥寺は誰が建造した?

飛鳥寺跡

飛鳥寺は奈良県明日香村にあり、かつての飛鳥京の北部に位置する仏教寺院。『日本書紀』によると、588年に天皇に仕えた蘇我馬子(そがのうまこ、551年?〜626年)が発願し、建立されたもの。蘇我氏は当時の有力な貴族であり、仏教に対しては寛容派で、ここは日本に仏教を広めるための施設でもありました。やがて中国や朝鮮半島から僧を呼び、日本初の本格的寺院となります。

ここは当初から大規模な伽藍(がらん)を持つ寺院として設計されました。中心には巨大な五重塔がある、一塔三金堂式伽藍配置となっていて、今でも当時の遺構が一部残っています。飛鳥寺は、仏教の中心として多くの僧侶や学問を志す者たちが集う場所となり、仏教の普及に大きく貢献しました。

実は奈良市の元興寺のルーツ

蘇我入鹿の墓/飛鳥寺跡

8世紀に平城京へと遷都すると、現在の奈良市に移転し元興寺(がんこうじ)となりました。この地の寺院は「本元興寺」と称して存続し、特に平安時代には大きな被害を受けましたが、その後はあまり歴史書には残されることが少なかったものの、何度も再建されてきたとされています。特に建設当時から残る飛鳥大仏は、この地でずっと残り続けたとされるもの。

現在の飛鳥寺の本堂は19世紀に再建されたもので、観光名所としても多くの人々が訪れています。蘇我氏の菩提寺ということもあり、近くには蘇我入鹿の首塚も置かれました。

飛鳥寺の見どころは?

飛鳥大仏(釈迦如来像)

飛鳥大仏/飛鳥寺跡
画像素材:写真AC

飛鳥寺の本尊として安置されている「飛鳥大仏」は、飛鳥時代の代表的な仏像で、609年(606年説も)に築かれた、現存する「日本最古」の仏像です。「大仏」と呼ばれるものの、高さは275.2cmしかありませんが、日本各地の「大仏」の元祖的存在。

像の下方にある石造台座には、両脇侍像が置かれたと考えられる穴が残ることから、当初は「三尊形式」であったと考えられますが、後に両脇侍像は失われ、釈迦如来像だけ残ったとされます。しかし、現在の大仏のほとんどは鎌倉時代に再建されたもの。2015〜2016年の調査によると、面部や頭部の一部以外は飛鳥時代のものとは確定できておらず、まだまだ調査が必要なようです。

本堂

本堂/飛鳥寺跡
画像素材:写真AC

飛鳥大仏が安置されている建物で、飛鳥寺の中心的な施設です。もともとは、中金堂と呼ばれる仏像が安置された建造物があった場所に築かれたとされるものの、現在は礎石が残るのみの。江戸時代の国学者である本居宣長によると、当時の本堂は門すらないようなお堂だったとされますが、現在の本堂は1826年に再建され、訪れる人々が参拝できるようになっています。

そこから南の庭園には、かつての五重塔の心礎(しんそ、塔の心柱の礎石)が発掘された場所を示す看板があります。

飛鳥寺はどんな理由で世界遺産に登録される予定なの?

飛鳥寺跡
画像素材:AdobeStock

日本政府が提出したの暫定リストに記載されている登録基準としては、以下の点。
※これらは2007年に暫定リストに記載された、日本における基準です。

登録基準(ii)
文化の交流を示すもの

登録基準(iii)
現存or消滅した文明の証拠

登録基準(iv)
人類の歴史を象徴する建築物の代表的な段階や景観の見本

登録基準(v)
伝統的集落や人類と環境の交流の見本

登録基準(vi)
人類史上に残る出来事や現存する伝統、思想、信仰、芸術

世界遺産マニアの結論と感想

飛鳥寺は、飛鳥大仏以外はほとんどが基壇のみしか残っていませんが、ここは日本初の本格的仏教寺院だけあって、当時の信仰の様子がよく分かり、仏教史においては重要な場所であったという点で貴重なもの。

ちなみに、蘇我馬子は孫の蘇我入鹿が乙巳の変(いっしのへん、大化の改新)によって殺害されたため、彼の功績は黒歴史として扱われたという説もあり、十七条憲法の創設や遣隋使派遣など、従来は聖徳太子の偉業とされるものは、太子ではなく、彼が指導したと考えられるという説も。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1200以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定マイスター認定済。

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