ウズベキスタン・カザフスタン・トルクメニスタンの世界遺産「寒冬のトゥラン(トゥーラーン)砂漠群」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分自然遺産
登録基準(9),(10)
登録年2023年

中央アジアでもカスピ海の東側に広がる、現在のウズベキスタン・カザフスタン・トルクメニスタンには、温帯であるにもかかわらず、極寒の冬を迎える砂漠地帯が点在してます。ここは厳しい環境の中でも動物や植物が暮らしていて、他の地域では見られない固有種や絶滅危惧種も多く見られるのが特徴。

ここでは寒冬のトゥラン砂漠群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、トゥラン砂漠について詳しくなること間違いなし!

目次

寒冬のトゥラン砂漠群とは?

寒冬のトゥラン砂漠群
画像素材:shutterstock

トゥラン砂漠とは、カスピ海東部から東側にある中央アジアの砂漠の集合体としていて、北はカザフスタン、東側はウズベキスタン、南はトルクメニスタンの領地に点在しています。砂漠というと熱帯地方や亜熱帯地方にある乾燥地帯のイメージがありますが、温帯にも砂漠は存在していて、トゥラン砂漠は冬を迎えることで、生物に大きな影響を与えるという独特なタイプの砂漠。

基本的には乾燥した暑い夏と極寒の冬を迎えるという一年のサイクルではありますが、冬になると降水量が増えるため、3〜5月になると、砂漠は植物が咲き誇り、一瞬だけ美しい世界が広がるようになります。植物は砂漠の過酷な環境で生き残るために、縮小した葉や深い根、多肉質のしっかりとした新芽などで適応し、トゥラン砂漠固有の種を生み出しています。

サバクオオトカゲ/寒冬のトゥラン砂漠群
画像素材:shutterstock

動物も、酷暑と寒さに対応できるようにそれぞれの耐性を持つように進化をしてきました。絶滅危惧種のコウジョウセンガゼルやアジアノロバの亜種・クーラン、サイガなどがこの地で暮らしていて、「北のセレンゲティ」と呼ばれるほどに、有蹄動物の大移動を見ることができます。

爬虫類は砂漠地帯にもかかわらず、非常に種類が豊富。全長約120cmにもなるサバクオオトカゲが有名で、乾燥地帯に生息するガマトカゲ属も存在します。

寒冬のトゥラン砂漠群
画像素材:shutterstock

登録されているのは、カザフスタンだと、ウズベキスタンの国境にあるアラル海のバルサケルメス島を中心とした「バルサ・ケルメス自然保護区」、南部の大都市郊外に広がる荒涼地帯である「アルティン・エメル国立公園」。トルクメニスタンは東部の「レペテック自然保護区」と中部の「ベレケットリ・ガラガム自然保護区」の乾燥地帯、北部のサリカミシュ湖近くの「カプランカー保護区」の低木が続くエリアなどが含まれています。

寒冬のトゥラン砂漠群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

寒冬のトゥラン砂漠群
画像素材:shutterstock

トゥラン砂漠が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ix)
寒冬のトゥラン砂漠群はほとんどが砂漠地形で、砂丘や盆地など、現在でも地形が変化していて、生物は降水量が少なく、極寒の冬と暑くて乾燥した夏、強風などに適応しながら多様化し、固有種などを生んでいるという点。

登録基準(x)
寒冬のトゥラン砂漠群は、砂漠全体で約1600種の植物が存在し、そのうち246種がヒユ科、キク科、イネ科、アブラナ科、マメ科など、砂漠に特化した多様性が見られる種が存在。ヨモギ属やカリゴナム属(タデ科の植物)のうち13種がトゥラン独自の固有種。ここは固有種が多く生息し、中央アジアの砂漠の生態系の中でも保護する価値の高いホットスポットであるという点。

世界遺産マニアの結論と感想

トゥラン砂漠群は、ウズベキスタン・カザフスタン・トルクメニスタンに点在する砂漠群で、砂漠といっても、砂だらけの砂漠ではなく、砂丘や荒野などさまざまなタイプが存在。この地は降水量が少なく、冬は寒く、夏は暑いのにもかかわらず、動植物がその環境に合わせて進化していて、固有種や絶滅危惧種が見られるという点で評価されています。

ちなみに、カザフスタンとウズベキスタンに位置するアラル海は、1960年代では世界でも第4位の面積を誇る湖だったのですが、半世紀で5分の1に縮小。しかも、年々干上がっているために、一つの湖だったものが4つの小さな湖に分かれてしまっています。これはソ連時代に行われた綿花栽培のための灌漑によるもので、「20世紀最大の環境破壊」と言われてしまうほど。カザフスタンとウズベキスタンの両政府は、堤防や人口湖などを建造し、少しずつ再生への道を探ってはいますが…なかなか思う通りにいかないのが現状。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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