登録区分 | 複合遺産 |
登録基準 | (1),(2),(3),(4),(5),(6) (7) |
登録年 | 1987年 |
山東省にある泰山は、中国の皇帝が天と地に自らの即位を知らせる儀式・封禅を行う場所であり、道教の聖地でもあります。ここは文人墨客が多く訪れ、その雄大な自然は彼らの作品にインスピレーションを多く与えました。
ここでは泰山がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、泰山について詳しくなること間違いなし!
泰山とは?始皇帝ゆかりの封禅が行われた場所
中国東部・山東省の泰安市にある聖山。標高は1545mの泰山は、中国の五岳の一つであり、冥界の最高神である「東岳大帝」を祀るということで道教では最も信仰を集める場所でもあります。死後は魂がこの山に帰ると信じられているもの。その自然景観からここは中国で最も美しい景勝地の一つです。
『史記』によると、秦の始皇帝が中国全土を統一すると、始皇帝はここで山頂で天に対して祈り、山麓で地を祀ったという「封禅(ほうぜん)」を行ったとされます。この伝統により前漢の武帝から清の康煕帝まで2000年近くも歴代の皇帝がここで封禅を行っていました。
霊山として多くの皇帝たちが訪れただけあって、ここにはさまざまな建築物が築かれました。麓にある封禅の儀式を行った岱廟が代表的。そして、岱廟から山頂へと延びる参道は約8kmで7000もの階段が続くという泰山を代表する景観となっています。参道の途中には、道観(道教寺院)や石碑、碑文などが並び、神聖な雰囲気が漂っています。
登録エリア内は、30億年前から変化してきた複雑な地形で、人間の手が加えられながらも赤松や黒松などの針葉樹が多く見られる景観は、自然遺産としても登録されています。
岱廟
道教における人の生死をつかさどる神・泰山府君を祀った廟で、歴代の皇帝がここで封禅の儀式を行った場所です。中国三大建築の一つに数えられ、孔廟と紫禁城と肩を並べる建築物。ここは何度も燃失し、現存するものは宋の時代に再建されたもの。内部には、全長6mの「東岳大帝啓蹕回鑾図(とうがくたいていけいひつかいらんず)」があり、これは東岳大帝の出巡から帰還までの場面をテーマにしたもの。
城壁で囲まれており、歴代皇帝が築いた40あまりの碑も建造。特に始皇帝がここを訪れた際に残したとされる、宰相・李斯の碑文が見られることでも知られます。
泰山はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
泰山が評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
泰山は、頂上までの階段や建築物、門など、人間の手によって築かれた自然景観は人類の偉大なる業績であるということ。
登録基準(ii)
泰山に作られた建造物や自然景観は、2000年に渡って中国の芸術に幅広い影響を与えてきたという点。
登録基準(iii)
漢王朝から封禅が行われたこの地は、過去の中国王朝の宗教感や芸術を証明するものであるということ。
登録基準(iv)
中国三大建築の一つに数えられる岱廟など、山岳に建築物が並び、これらは唐と宋の時代の文化や宗教などが見られるという点。
登録基準(v)
泰山は新石器時代から聖地と崇められ、古来から自然と文化が入り交じる居住地であったということ。
登録基準(vi)
泰山は孔子や始皇帝ゆかりの地である、そして書物や文学のテーマにもされることが多く、中国史との関連が深いという点。
登録基準(vii)
30億年近くの自然の変化により、泰山は複雑な地形を持ち、巨大な岩盤の上に木々が並び、そこに人間が手を加えることによって独特の自然景観が誕生したということ。
世界遺産マニアの結論と感想
文化遺産の登録基準をすべて満たしているというのは、他には中国の「莫高窟」、イタリアの「ヴェネツィアとその潟」だけという非常に珍しい世界遺産でもあります。ここは古来より聖地として崇められ、歴代皇帝がここで封禅を行うために壮麗な建築物が築かれ、文学や芸術も発展していったという点で評価。そして、地球の歴史が見られる場所でもあり、その自然景観も評価されているという点もポイント。
ところで、「封禅」とはいうものの、実際はどんな内容なのかは秘密にされていたために具体的に何をしていたのかは不明です。ちなみに、始皇帝の時代から既に古い時代の儀式の方法は失われていて、始皇帝自らのやり方で行われたとされますが、割と適当な儀式だったのかもしれません…。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。