登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3), (5) |
登録年 | 2024年 |
ボルネオ島北部に位置するニア国立公園。ここは熱帯雨林の中に巨大な洞窟と多数の小さな洞窟で構成され、洞窟では1958年に3万5000年〜4万年前の人類の遺骨が発見されました。発見当時にアフリカ以外で発見された現生人類の遺骨としては最古のものとされ、人類学に衝撃を与えたもの。
ここではニア国立公園の洞窟群の考古遺跡がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ニア国立公園について詳しくなること間違いなし!
ニア国立公園の洞窟群の考古遺跡とは?
マレーシアのボルネオ島にあるサラワク州にある国立公園。この地は後期更新世(12万6000年〜1万1700年前)の地球温暖化が始まったことにより、海底に沈んでいた大地が浸食された後、熱帯雨林と石灰岩の洞窟が組み合わされた景観が形成されるようになりました。敷地内には石灰岩の丘、低地熱帯雨林、洞窟が広がっていて、1974年に国立公園とされ、洞窟には壁画や木製の棺、そして、旧石器時代の人類の頭蓋骨などが多く発見され、これらを保護しています。
もともとは1855年にイギリスの博物学者・人類学者であるアルフレッド・ラッセル・ウォレス(1823〜1913年)が探索したことから始まり、1958年にサラクワ博物館の学芸員だったトム・ハリソンが「ディープ・スカル」を発見。これは3万5000年〜4万年前の遺骨と特定され、当時はアフリカ以外で確認された現生人類の遺骨としては最古のものでした。さらには、ペインテッド・ケイブでは、128もの壁画が発見。
洞窟には何百万ものアナツバメが生息していて、この地域の原住民であるプナン族によって、1800年代には鳥の巣を採取していたことが確認でき、さらには記録によると中国の唐(618〜907年)の時代にまで遡る可能性もあります。洞窟は古くから神聖な場所として儀式が行われ、保護されてきました。
ニア国立公園の洞窟群の考古遺跡はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ニア国立公園が評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
ニア洞窟では、東南アジアの農業の起源について、採集から農耕までの移行期に関する新たな証拠を提供し、これは熱帯雨林環境における適応によって形成された可能性があり、その変遷が複雑であったということを示すもの。さらにプナン族のツバメの巣の採取によって神聖な場所として管理されていて、人間と自然の調和というアジアの哲学も見られるという点。
登録基準(v)
地元の人々では、洞窟からグアノ(動物の糞の堆積物)や鳥の巣を採取する際に、モロン (必要なものだけ取る) という古代からの伝統を今でも守っているということ。
世界遺産マニアの結論と感想
ニア国立公園の熱帯雨林と石灰岩が広がるという景観は、かつて存在していたスンダ棚が沈んだ際に生まれたもので、ここは現地に住むプナン族にとっても神聖な場所。アフリカ以外で発見された初期の現生人類の暮らした跡が見られ、採集社会から農業社会までの変遷について、複雑な経路があった可能性を示すという点でも評価されています。
ちなみに、プナン族は現在は2万人ほどの少数民族。なんとプナン族の言葉には「ありがとう」が言葉が存在しないらしいとのこと。別に礼儀がないというわけではなく、彼らはモノは個人が持つものではなく、次から次へと循環させ、やがて自然へと帰還させていくという思想があるというのが理由だそう。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。