ポルトガルの世界遺産候補「カルースト・グルベンキアン財団本部と庭園」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分(暫定リストに記載)文化遺産
登録基準(暫定リストに記載)(1),(2),(4),(6)
申請年(暫定リストに記載)2017年

ポルトガルの首都リスボンには、実業家であり、慈善家であったカルースト・グルベンキアンの資産によって設立された財団があり、本部は美術館やコンサートホール、庭園を含めた文化センターとなっています。これらは自然と調和するようなデザインであり、モダニズム建築の影響だけでなく、ポルトガルと異文化の交流が見られるという傑作。

ここではカルースト・グルベンキアン財団本部と庭園がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、カルースト・グルベンキアン財団本部と庭園について詳しくなること間違いなし!

目次

カルースト・グルベンキアン財団本部と庭園とは?

画像素材:shutterstock

カルースト・グルペンキアン(1869〜1955年)は、トルコ出身のアルメニア人実業家。彼は石油職人の息子であったため、各国の石油会社に出資し、莫大な財産を築き上げたことで知られます。1942年にポルトガルに移住すると、1955年にリスボンで亡くなりました。グルペンキアンの死後、1956年に彼の個人資産をベースにカルースト・グルべキアン財団が設立。

その後、リスボンの中心部にあった、かつてのスペイン大使館の跡地を財団が買い取り、1969年に彼の生前集めたコレクションを展示する美術館をこの地に建造。ここは庭園を含めた壮大な文化センターでもありました。1960年以降は、ポルトガルにおける教育、芸術、科学などの面で大いに貢献した場所でもあります。

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敷地の北部に位置する「カルースト・グルベンキアン美術館」は、彼が収集した古代エジプトから20世紀初頭までのさまざまジャンルの作品が展示。美術館から公園の景色が眺められるという、自然と調和したデザインとなっていて、当時としてはユニークなモダニズム建築でもあります。そして、西側にある本部とコンサートホールとも回廊と繋がっているというのも特徴。

庭園は7万5000平方mもの敷地が登録されていて、建物が置かれるだけでなく、大小2つの湖の環境を作り出し、湖を背景になるような野外講堂も建造されています。南側には、ポルトガルの近現代の芸術品を展示した「グルベンキアン近代美術館」もあり、こちらは1983年に建造されたもの。

カルースト・グルベンキアン財団本部と庭園はどんな理由で世界遺産に登録される予定なの?

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ポルトガル政府が提出した暫定リストに記載されている登録基準としては、以下の点。
※これらは2017年に暫定リストに記載された、ポルトガルにおける基準です。

登録基準(i)
カルースト・グルベンキアン財団本部と庭園は、芸術、舞台、音楽、科学、教育を一つのまとまった複合施設に集めるという取り組みであり、グルペンキアンのコレクションとともに、自然、建築、人間が融合した最高の創造的表現であり、その人道的な活動かつ異文化交流が見られ、これは創始者であるグルスペキアンの思想を示す傑作であるという点。

登録基準(ii)
カルースト・グルベンキアンは東地中海出身なだけに、ここはヨーロッパと異文化交流が見られるもので、ポルトガル建築と組み合わせています。ここは近代の風景デザインから影響を受け、ポルトガルの文化を組み合わせた、自然と現代建築の交流の例であり、ポルトガルが独裁政権だったエスタド・ノヴォ(1933〜1974年)の中での文化発展の出発点を示すものであったということ。

登録基準(iv)
カルースト・グルベンキアン財団本部と庭園は、30人以上の建築家や音楽家、照明のスペシャリスト、学者などの専門家によって設計され、建造物やインテリアなど、内部と外部、建物と自然を調和させるというデザインになっていて、建築からアート、デザインに至るまで文化・社会的に価値の高い総合施設を築き上げているという点。

登録基準(vi)
カルースト・グルベンキアン財団は、ポルトガル社会において、教育や福祉という分野において貢献しています。財団は科学分野においては研究所も運営していて、30ヶ国以上400人の研究者を有し、生物医学に関しては10年で論文の30%以上を執筆するほど。移民の場合、高齢者や子どもたちへの支援も目的にしていて、財団本部の革新的な活動もここに反映されているということ。

世界遺産マニアの結論と感想

国内外でさまざまな分野で支援をするカルースト・グルべキアン財団の本部だけあり、創設者のグルべキアンの思想、異文化交流などが見られ、美術館はモダニズム建築に影響を受けた、建物と自然を調和させるデザインであり、財団の活動も反映された複合建築物であるという点で評価されています。

ちなみに、カルースト・グルベンキアンは、ロンドンの大学で学び、後にイングランドで唯一のアルメニア使徒教会である聖サルキス教会を建設しました。ここには彼の墓もあるのですが、この教会のデザインは、アルメニアの世界遺産のハフパット修道院の鐘楼をモデルにしています。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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