1972年に世界遺産条約が結ばれると、1978年には12件の遺産が初めて「世界遺産」として登録されました。最初に登録された世界遺産はどの国の遺産なのでしょうか?
ここでは、最初に登録された12の世界遺産を世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、世界遺産第1号について詳しくなること間違いなし!
アーヘン大聖堂/ドイツ
フランスとの県境近くにあるアーヘンは、フランク王国の首都的存在になるほどにカール大帝に愛された街。この地には793〜813年にかけて礼拝堂が建設され、大帝も814年にここに埋葬されました。
八角形の聖堂に壮麗なクーポラ(円蓋)を持つこの大聖堂は、16世紀まで神聖ローマ帝国の皇帝への戴冠式が行われた場所としても有名です。
クラクフ歴史地区/ポーランド
クラクフは、ポーランド南部のヴィスワ川沿いに作られた街。起源ははっきりとしませんが、記録として残っているのは10世紀から。ポーランド王国が築かれた11世紀になるとクラクフは首都となります。13つのエリアに分かれており、北部の旧市街、王宮のあるヴァヴェルの丘、南部のカジミェシュ地区にそれぞれ分かれています。
街には王の居城だったヴァヴェル城、中央ヨーロッパで2番目に古いヤギェウォ大学など、ポーランド王国の輝かしい時代の建築物が現在でも残っています。
ヴィエリチカとボフニアの王立岩塩坑群/ポーランド
ポーランド南部にあるヴィエリチカとボフニャの岩塩坑は13世紀から使用されていました。ここで採掘される塩はポーランドにおいては重要な産業となり、塩坑道はヨーロッパの採掘技術の発展が見られるもの。そして、地下にある礼拝堂では塩で作られた芸術作品などが見られるのが特徴です。
ラリベラの岩窟教会群/エチオピア
エチオピアの首都アディスアベバから北へ約645km。エチオピア高原に位置するラリベラ村には、12〜13世紀に岩を掘り下げて作られた聖堂や礼拝堂が11箇所もあり、かつて王はこの地を「新しいエルサレム」にしようと考えていました。ラリベラには巡礼者が訪れるようになり、エチオピアのキリスト教徒にとっては一生に一度は訪れたいという聖地となっています。
シミエン国立公園/エチオピア
シミエン国立公園は、エチオピア北部、アムハラ州にある220平方kmの広大な公園。何百万年にも渡る侵食によって、大地は刻まれ、尖った岩山や深い谷、1500mの絶壁など、壮大な景観が広がっています。
ここは「アフリカの天井」と呼ばれ、標高4620mのラス・ダシェン山も美しいですが、ゲラダヒヒやシミエンキツネなど貴重な動物も多く見られ、ワリアアイベックスといった「地球の歴史の証人」でもある動物も生息。
ゴレ島/セネガル
セネガルの首都ダカールの沖合にある小さな島、ゴレ島。今はのどかな島ですが、ここには15〜19世紀にかけてアフリカ沿岸最大の奴隷貿易の拠点でした。「奴隷の家」など、カラフルな家々が残っており、現在でもその名残が残っています。ここは「負の世界遺産」として人類の忘れていけない記憶が残る場所。
メサ・ヴェルデ国立公園/アメリカ
コロラド州南西部、標高2600m以上の高原には、断崖の下に鳥の巣のように造られた岩窟住居が残っています。メサ・ヴェルデとは、スペイン語で「緑の大地」という意味で、これは6〜12世紀にプエブロ族の先祖とされるアナサジ族によって建造されたもの。なんと100以上の部屋があった住居群もあり、そこには200人以上が暮らしていたとされています。
イエローストーン国立公園/アメリカ
アメリカ北西部にあるイエローストーン国立公園は、約9000平方kmという広大な公園。この地域は何度も大規模の噴火が発生しており、60万年前の最後の噴火時に地形がドーム状になりました。その後、カルデラが形成され、地表の割れ目から雨水が入り込むと、その水をマグマが熱することで間欠泉から熱湯が出てくるようになったのです。
敷地内には、地球の間欠泉の半分以上が集まり、多数の温泉も点在し、地熱が生み出す景観が多く見られます。ここは1872年開園とアメリカ初の国立公園で、ハイイログマ(グリズリー)やヘラジカなど、野生動物も多く生息していることでも有名。
ランス・オ・メドー国定史跡/カナダ
カナダ東部、ニューファンドランド島。ランス・オ・メドーには、なんとコロンブスの到達よりも4世紀ほど前、11世紀にバイキングがこの地を訪れていたという証拠を残しています。ここは北アメリカで最初にヨーロッパ人が住んだ場所。
ランス・オ・メドーは、「草原の入り江」を意味し、遺跡からは木造の建築物跡が発見され、アイスランドとグリーンランドで発見されたものとの関連性が見られます。
ナハニ国立公園/カナダ
カナダのノースウェスト準州にあるナハニ国立公園は、約5000平方kmもの広大な公園です。「ナハニ」とは、先住民の言葉で「精神」という意味。公園の中心は、標高2972mのマッキンジー山を含むロッキー山脈の間を流れるくサウス・ナハニ川の深い峡谷。ここには巨大なヴァージニア滝など、絶景が広がっています。そして、野生動物の宝庫で、オオカミ、ハイイログマ、トナカイなども多く生息。
キトの市街/エクアドル
エクアドルの首都キトはエクアドルのピチンチャ火山の中腹、2850mの高地に位置する都市。16世紀にインカ帝国時代にあった都市が廃墟になった後、サン・フランシスコ聖堂・修道院など、宗教建築が多く建設され、現在は「アメリカの修道院」と呼ばれるほどに。ルネサンス様式、バロック様式、ムデハル様式(スペインのイスラム風建築様式)など、さまざまな建築様式が見られ、地震で被害に遭ったにもかかわらず、保存状態は極めて良好です。
ガラパゴス諸島/エクアドル
ガラパゴス諸島は、エクアドルの沿岸から西へ約1000kmに位置する孤島群。太平洋に浮かぶこの島は、ゾウガメ(ガラパゴ)が多く住むことからガラパゴスと呼ばれますが、正式名称は「コロン諸島」。
ガラパゴス諸島は、19の島々と周辺の海洋保護区すべてが世界遺産に登録されています。 大陸からも離れているため、独自の進化を遂げた動物も多く、19世紀にここを訪れたチャールズ・ダーウィンは ここで『進化論』の着想を得たという場所。ガラパゴス諸島は特異な生態系が多く、「生きた博物館と進化のショーケース」と称されています。
世界遺産マニアの結論と感想
初めて登録された世界遺産は、文化遺産が8つ、自然遺産が4つとバランス良く登録。しかし、アジアはまだ登録されておらず、まだまだ黎明期といった内容ですね。
ちなみに、世界遺産リスト作成のきっかけとなったヌビアの遺跡は1979年に登録と、実は一年遅れて登録されたもの。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。