登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (2), (4) |
登録年 | 2014年 |
荒船風穴(あらふねふうけつ)は「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産の一つ。ここは明治後期、日本でも最大規模の蚕種(蚕の卵)の貯蔵地であり、近代の養蚕・製糸業において重要な場所でもありました。ところで、荒船風穴はなぜ世界遺産なのでしょうか?意外と知ってそうで知らない!
ここでは荒船風穴がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、荒船風穴について詳しくなること間違いなし!
荒船風穴とは?
下仁田町の中でも長野県の県境近くにある蚕種(蚕の卵)用の貯蔵風穴。これらは地元の名士でもある庭屋静太郎と、彼の息子で養蚕業の教育機関であった高山社で学んだ庭屋千壽(せんじゅ)が作り上げたもので、第1号の風穴は1905年に完成しました。そして、1908年に第2号、1913年に第3号も完成し、合計で3つの風穴があります。
通常、蚕の繭は毎年春に孵化するもの。しかし、風穴に置くことによって、岩の隙間から吹き出す冷風により孵化を遅らせることができ、夏や秋でも繭を作り出すことに成功したのです。これによって生糸の増産が可能となり、1909年にはこの3つの風穴だけで蚕種枚数が110万も貯蔵できるようになり、全国でもトップの規模となりました。しかし、工孵化法や氷冷蔵によって風穴での貯蔵は廃れていき、昭和初期には放棄され、現在は遺構だけ残っています。
荒船風穴はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
荒船風穴が評価されたのが、以下の点。
登録基準(ii)
富岡製糸場では、当時のフランスの養蚕技術が早期に伝えられ、20世紀初頭には世界でトップクラスのシェアを誇るようになりました。ここは世界に共有された養蚕技術が早期に確立していたという場所であったという点。
登録基準(iv)
富岡製糸場と関連する絹産業遺産群では、当時の西洋の最新技術を採用しつつも、日本の木造の伝統技術が利用されていました。それは「木造レンガ造り」など和洋折衷の建築様式が見られるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
荒船風穴は、季節に関わらず生糸の増産が可能となった施設で、明治時代に日本最大の貯蔵規模を誇る風穴で、近代の養蚕・製糸業において多大に貢献してきたという点で評価されています。
ちなみに、6〜9月にここを訪れると、冷風と外気の温度差で石積みの間から白雲が発生することでも知られます。まさに「風穴」という名称にふさわしい現象で、見られたらラッキー。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。