登録区分(暫定リストに記載) | 文化遺産 |
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登録基準(暫定リストに記載) | (2),(3),(4),(5),(6) |
申請年(暫定リストに記載) | 2007年 |
キトラ古墳は「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の構成遺産の一つ。近くにある高松塚古墳に続いて、日本で2番目に発見された極彩色壁画を持つ古墳で、美しい四神の壁画があることで有名。ところで、キトラ古墳はなぜ世界遺産候補なのでしょうか?
ここではキトラ古墳がなぜ世界遺産候補なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、キトラ古墳について詳しくなること間違なし!
キトラ古墳とは?
古墳の場所はどこにある?
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奈良県明日香村にある古墳の一つ。飛鳥では南西部に位置し、小高い丘である「阿部山」の南斜面に築かれた、二段築成作りの円墳。上段の高さは2.4m、下段の高さは約90cmとそれほど大きくはないものの、1983年に石室内で彩色壁画に玄武が発見され、これは高松塚古墳に次ぐ、日本でも2例目の極彩色壁画。1998年には青龍と白虎、天文図が確認、2001年には朱雀と十二支像が発見されました。
しかし、外気に触れてカビが発生したため、2010年までには壁画を剥ぎ取って現在は外部で保管されています。基本的に非公開ですが、定期的に公開。
キトラ古墳は誰のお墓?
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現在も被葬者は不明となっていますが、古墳そのものは7〜8世紀に建造されたと推測されているため、現在で40代天皇・天武天皇(?〜686年)の皇子や側近の高官と考えられています。内部では金象眼(文字に金を埋め込む技法)が発見されていて、これは身分が高い人物であったという証拠でもあります。
古墳周辺が「阿部山」と呼ばれていたことから、右大臣の阿倍御主人(あべのみうし)という天皇天皇の部下であった人物の墓であるというのが有力ではあるもの、天武天皇の第九皇子・弓削皇子(ゆげのみこ)という説もあり、さまざまな説があります。
なぜ「キトラ」と呼ばれる?
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名前の由来は、さまざまですが、石室を覗くと亀と虎の壁画が見られたことから「亀虎(きとら)」と呼ばれたという話や、近くにあった集落から北西に位置することから、四神のうち、北をつかさどる「亀(玄武)」と、西をつかさどる「虎(白虎)」の間にあったという説などもあり、はっきりとはしていません。
四神図や天文図の壁画
四神図
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現在は石室は非公開であるものの、18個の凝灰岩の切石を組み上げた石室で、壁画には、東西南北の四方位を司る神である「青龍」「白虎」「朱雀」「玄武」の四神が描かれていて、中国の影響はあるものの、青龍と白虎は右向きであるという点では異なり、これは日本だけのもの。
四神の下には、それぞれ3体ずつ十二支の獣面人身像が描かれていて、これは同時代の中国や朝鮮半島を受けたものではあるもの。近くにある「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」で再現されています。
天文図
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石室の天井には天文図が描かれており、赤道や太陽の通り道である黄道が描かれ、その中には北斗七星が配置されているのが特徴。これは日本最古の星図とされ、中国でも同時代の天文図がまだ見つかっていないことから東アジアでも最古の天文図ということになります。そして、これは天体観測の技術が高度だったことを示す貴重な証拠。
呪いがある?
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キトラ古墳には、もともと「呪い」についての伝承やそういった記録はありませんが、遺跡発掘でよくある「都市伝説」として「呪い」と結びつけられることがあります。とはいえ、近くにある高松塚古墳にはそういったエピソードがあったりしますが、キトラ古墳には噂の類のもの以外はほとんどありません。
ちなみに、天文図に描かれた北斗七星は東洋では「死」に結びついているとされていたため、ある意味「呪い」が込められているとも考えられますが…果たして?
キトラ古墳はどんな理由で世界遺産に登録される予定なの?
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日本政府が提出したの暫定リストに記載されている登録基準としては、以下の点。
※これらは2007年に暫定リストに記載された、日本における基準です。
登録基準(ii)
文化の交流を示すもの
登録基準(iii)
現存or消滅した文明の証拠
登録基準(iv)
人類の歴史を象徴する建築物の代表的な段階や景観の見本
登録基準(v)
伝統的集落や人類と環境の交流の見本
登録基準(vi)
人類史上に残る出来事や現存する伝統、思想、信仰、芸術
世界遺産マニアの結論と感想
キトラ古墳は長らく研究が進められ、保存や修復が行われた後、当時の日本の美術や科学技術の水準の高さを理解する上で非常に重要な遺産であり、国内外から注目を集めているという点で貴重なものです。
ちなみに、阿倍御主人は『竹取物語』にも登場する、「右大臣あべのみうし」のモデルであると考えられています。劇中ではかぐや姫に求婚する5人の公家の一人で、かぐや姫に無茶振りされて珍品を得ようとして、結局失敗してしまったので、あまり良いイメージはないですが…。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。