イタリア・クロアチア・モンテネグロの世界遺産「16世紀から17世紀のヴェネツィアの防衛施設群：スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マール」とは？世界遺産マニアが解説

ヴェネツィア共和国（697〜1797年）は地中海各地に領土を持っていた海洋帝国で、イタリア北部から東アドリア海沿岸まで約1000kmに渡って各地に防衛施設が建造されました。スタート・ダ・テッラはヴェネツィアの北西をヨーロッパ諸国から防衛する施設で、西スタート・ダ・マールはアドリア海から地中海へと抜ける海路と港を保護するものでした。

ここでは16世紀から17世紀のヴェネツィアの防衛施設群：スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールがなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールについて詳しくなること間違いなし！

16世紀から17世紀のヴェネツィアの防衛施設群：スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールとは？

現在のヴェネツィアを本拠地とした海洋国家であったヴェネツィア共和国。イタリアだけでなく、地中海各地に領土を持っていましたが、世界遺産としては、現在のイタリア、クロアチア、モンテネグロ各地の防衛施設が登録されています。これらはヴェネツィア共和国の権力と拡大を示すもの。

火薬の導入によって要塞の設計は近代化され、それは軍事技術と建築に大きな変化をもたらしました。これらは稜堡を持つ、当時でいえば最新の要塞設計であり、スタート・ダ・テッラはヴェネツィアの北西方面をヨーロッパ諸国から防衛するために建造された施設で、スタート・ダ・マールはアドリア海から地中海へと抜ける海路と港を保護するものでした。

スタート・ダ・テッラ

ヴェネツィアとその北西部を中心に建造された防衛施設群で、西からロンバルディア州の「ベルガモの要塞都市」、ヴェネト州の「ペスキエーラ・デル・ガルダの要塞都市」、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州の「パルマノーヴァの都市要塞」が登録。

ベルガモはアルプスの麓に位置し、丘の上に旧市街が建造されました。ここは15世紀後半にヴェネツィア共和国に支配されるようになると、城壁で囲まれた防衛都市へと改修。

パルマノーヴァは、当時敵対していたオスマン帝国から防衛するため、周囲に16世紀末にヴェネツィア共和国によって設計された星形要塞が見られ、今でも保存状態がよいというのも特徴です。ここは建築家ヴィンチェンツォ・スカモッツィによって設計された、ルネサンスの理想都市でもありました。

西スタート・ダ・マール

アドリア海から地中海へ抜ける海路と、アドリア海各地に点在する港湾都市を防衛するものとして建造。北からクロアチアのザダル群にある「ザダルの防衛システム」、シベニク=クニン群の「聖ニコラス要塞」、そして、モンテネグロにある「コトルの要塞都市」が登録。

クロアチアのザダルは、13世紀からヴェネツィア共和国に占領され、半島となっている旧市街を囲むように建造された防衛施設が世界遺産として登録されています。

ちなみに、コトルの要塞都市は「コトルの自然と文化歴史地域」として、1979年に個別の世界遺産として登録されています。

16世紀から17世紀のヴェネツィアの防衛施設群：スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールはどんな理由で世界遺産に登録されているの？

スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールが評価されたのが、以下の点。

登録基準（iii）
ヴェネツィアの防衛施設群は、共和国内で16〜17世紀にかけて発展し、近代化されたもので、スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールに残る防衛施設は、軍事施設というだけでなく、都市としての構造を持ち、ヴェネツィア湾付近からアドリア海まで広がっていたという点。

登録基準（iv）
ヴェネツィアの防衛施設群は、銃器を使用することが多くなった時代に構築された近代的な防衛施設で、スタート・ダ・テッラと西スタート・ダ・マールには技術や戦略、戦闘法、新たな建築要素を含み、近代的な防衛システムを確立していったということ。

世界遺産マニアの結論と感想

ヴェネツィアは現在のイタリア北部から地中海沿岸まで広い地域を支配した国家だけあって、各地に残る防衛施設は火器が導入され、当時の最先端の要塞が見られるという点で評価されています。

ちなみに、こちらの世界遺産には登録されていませんが、ヴェネツィア共和国が支配した地域は、現在のドゥブロヴニク（ラグーサ共和国）やコルフ島（ギリシャ）、キプロス島など、とにかく世界遺産だらけだったりします。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。