登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3), (4), (5) |
登録年 | 2001年 |
ポルトガル北部に位置するアルト・ドウロ地方は、2000年にわたって伝統的なワイン造りが行われてきた地。18世紀以降にこの地域から多く出回ったポートワインは世界的に有名となりました。ここは伝統なブドウ栽培によって技術や社会、経済の発展が見られる文化的景観でもあります。
ここではアルト・ドウロ・ワイン生産地域がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、アルト・ドウロについて詳しくなること間違いなし!
アルト・ドウロ・ワイン生産地域とは?
イベリア半島北部を流れるドウロ川は、スペイン中央部のソリア県が水源で、ポルトガル北部を経由してポルト港まで流れ出るという全長897kmの国際河川。アウト・ドウロ地方はドウロ川によって形成された急勾配の段々畑が続く地で、夏は暑く、冬は寒冷で降水量も少ないということから、ワイン造りに適しています。
この地でワイン造りが本格的に始まったのは3〜4世紀のローマ時代で、中世にはイスラム教徒の侵入によって中断するものの、14世紀から高品質のワインが多く造られるようになります。そして、18世紀になると、この地方独特の甘味とコクの強い「ポートワイン」が造られ、次第に英国で人気が出るようになりました。
ここは何世紀にも渡って段々畑が作られていき、古くは1列や2列のぶどうの木だけしか栽培できなかったのですが、19世紀にフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)によってヨーロッパのぶどう畑がほぼ絶滅したこともあり、19世紀後半〜20世紀初頭に再び形成され、現在も見られる石壁に囲まれた規則的な段々畑続くようになりました。日光が当たるように幅が広いというのが特徴。
中腹には白い壁の家を持つ村が並び、18世紀に建造された教会の周囲には網目のように道路が張り巡らされています。他にも丘の上には邸宅や小さい礼拝堂などが点在。これらはワイン造りの長い伝統によって、技術や社会、経済の発展が見られ、今でも伝統的な方法でワイン造りが続くという文化的景観が見られます。
アルト・ドウロ・ワイン生産地域はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
アルト・ドウロが評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
アルト・ドウロ地方は2000年近くワインを生産していて、その景観は人間の手によって作られてきたという点。
登録基準(iv)
アルト・ドウロ地方は、段々畑とワイン農場、村、礼拝堂、道路など、ワイン製造に関連するあらゆる活動が景観に見られるということ。
登録基準(v)
アルト・ドウロ地方の文化的景観は、伝統的なヨーロッパのワイン生産地の傑出した例であって、人間の活動が反映されたもの。18世紀以降、この地方の主力製品であったポートワインは、世界的に有名になり、このぶどう栽培の長い伝統は技術、社会、経済の進化を反映する景観を生み出したという点。
世界遺産マニアの結論と感想
アルト・ドウロ地方は2000年近くもこの地方でワイン造りが続けられたことで、段々畑、農場、村、礼拝堂など、ワインにまつわる文化的風景が今でも見られ、主力製品であるポートワインは今でも世界的なブランドであるという点で評価されています。
ちなみに、サントリーで販売している「赤玉スイートワイン」は、明治時代に販売されたころは「赤玉ポートワイン」と呼ばれていました。しかし、これはそもそもワインを改良して、日本人の口にあうように甘味料を入れて作った、いわば「ワイン風飲料」だったため、ポルトガル政府からの抗議もあり、1973年に現在の名称となったのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。