中東とは、本来はヨーロッパから見て東側に位置する国々を指し、現在では西アジア諸国にエジプトが加わったエリアを示すことが一般的。この地域ではメソポタミア文明とエジプト文明が成立したことから、古代遺跡では人類の歴史の起源が見られます。その一方、さまざまな宗教が入り乱れていることから各宗派の聖地が多いというのも特徴。さまざまな遺産がありますが、世界遺産はいくつあるでしょうか?
ここでは、中東の世界遺産を世界遺産マニアが一覧にして分かりやすく解説。それぞれの遺産を簡潔に解説していきましょう。
トルコ/21件
トルコといえば、ヨーロッパとアジアを結ぶ架け橋のような位置にある国。イスランブールやカッパドキア、パムッカレ…と有名な世界遺産が多く、文明校の交差路にふさわしい遺産が多く並ぶのが特徴。
■登録されている世界遺産
イスタンブール歴史地域/1985年登録
ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群/1985年登録
ディヴリーイの大モスクと病院/1985年登録
ヒッタイトの首都ハットゥシャ/1986年登録
ヒエラポリス-パムッカレ/1988年登録
ネムルト・ダウ(ネムルト山)/1987年登録
クサントス・レトゥーン/1988年登録
サフランボル市街/1994年登録
トロイの考古遺跡/1998年登録セリミエ・モスクとその社会的複合施設群/2011年登録
チャタル・ヒュユクの新石器時代遺跡/2012年登録
ブルサとジュマルクズック:オスマン帝国発祥の地/2014年登録
ペルガモンとその重層的な文化的景観/2014年登録
エフェソス(エフェス)/2015年登録
ディヤルバクル城塞とヘヴセル庭園の文化的景観/2015年登録
アニの考古遺跡/2016年登録
アフロディシアス/2017年登録
ギョベクリ・テペ/2018年登録
アルスランテペの遺丘/2021年登録
ゴルディオン/2023年登録
木柱と木製上部構造を備えたアナトリアの中世モスク群/2023年登録
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エジプト/7件
エジプトといえば、ピラミッドやアブ・シンベル神殿、王家の谷…誰もが知っている世界遺産の宝庫。その歴史は深く、さらに迫力がある建造物が多く残っている国で、日本人にも人気のある遺跡が並んでいます。
■登録されている世界遺産
メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯/1979年登録
古代都市テーベとその墓地遺跡/1979年登録
アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群/1979年登録
カイロ歴史地区/1979年登録
アブ・メナ/1979年登録
聖カタリナ修道院地域/2002年登録
ワディ・アル・ヒタン(クジラの谷)/2005年登録
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サウジアラビア/8件
サウジアラビアはアラビア半島の約8割を占める広大な国家。石油大国である一方、メッカとメディナというイスラム教にとって2大聖地があることで有名で、人々は厳格なイスラム教の戒律を守り続けています。
■登録されている世界遺産
アル=ヒジュルの考古遺跡(マダイン・サーレハ)/2008年登録
ディルイーヤのツライフ地区/2010年登録
メッカへの入り口、歴史都市ジッダ(ジェッダ)/2014年登録
サウジアラビアのハーイル地方の岩絵/2015年登録
アハサー・オアシス、進化する文化的景観/2018年登録
ヒマー・ナジュラーンの文化的岩絵群/2021年登録
ウルク・バニ・マアリッド/2023年登録
アル=ファウ考古地域の文化的景観/2024年登録
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ヨルダン/7件
ヨルダンは国土の80%は砂漠に位置する国家。なんといってもヨルダンといえば、映画『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のロケ地になったペトラ遺跡があることで有名ですね。この地は交易の地であることから、古代遺跡も多く点在しています。
■登録されている世界遺産
ペトラ/1985年
アムラ城/1985年
ウム・アル=ラサス/2004年登録
ワディ・ラム保護地域/2011年登録
洗礼の地「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」(アル=マグタス)/2015年登録
サルト-寛容と都市的ホスピタリティの場/2021年登録
ウンム・アル=ジマル/2024年登録
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シリア/7件
シリアは中東に位置していて、トルコとイラク、ヨルダン、イスラエル、レバノンと各国との国境を面してます。ニュースでは内戦や経済制裁などが伝えられる通り、現在は非常に不安定なイメージがある一方、パルミラ遺跡など、有名な遺跡が点在するという面も。
■登録されている世界遺産
古代都市ダマスカス/1979年登録
パルミラ遺跡/1980年登録
古代都市ボスラ/1980年登録
古代都市アレッポ/1986年登録
クラック・デ・シュヴァリエとカルアト・サラーフ・アッディーン/2006年登録
シリア北部の古代村落群/2011年登録
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レバノン/6件
レバノンは地中海に面していて、宗教と民族においては非常に多様性のある国。古来より地中海の交易で繁栄したフェニキア人の本拠地でもありました。世界遺産にも歴史を感じさせる遺産が多いのが特徴です。
■登録されている世界遺産
アンジャル/1984年登録
バールベック/1984年登録
ビブロス/1984年登録
ティルス(スール)/1984年登録
カディーシャ渓谷と神の杉の森/1998年登録
トリポリのラシッド・カラミ国際見本市/2023年登録
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イスラエル/9件
現在のイスラエル国は第二次世界大戦後に誕生し、この地はユダヤ人のルーツでもあることから彼らの歴史を示すものが多く登録されています。一方、先史時代やイスラム時代の遺構が登録されているのも特徴。
■登録されている世界遺産
マサダ/2001年登録
アッコ旧市街/2001年登録
テルアビブの白い都市-近代化運動/2003年登録
聖書ゆかりの遺丘(テル)群-メギド、ハツォル、ベエル・シェバ/2005年登録
ネゲヴ砂漠の香の道と都市群/2005年登録
ハイファと西ガリラヤのバハーイー教聖地群/2006年登録
人類の進化を示すカルメル山の遺跡群:ナハル・メアロット(ワディ・エル=ムガーラ)の洞窟群/2012年登録
ユダヤ低地にあるマレシャとベト・グヴリンの洞窟群 : 洞窟の大地の小宇宙/2014年登録
ベート・シェアリムのネクロポリス-ユダヤ人再興の中心地/2015年登録
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エルサレム/1件
エルサレムとは、エジプト、シリア、アラビア半島の分かれ目に位置する「パレスチナ」にあります。ここは小高い丘の上に築かれた都市。街は西側がユダヤ人が住む地区で、東側はアラブ人が住む地区に分かれています。その間にある旧市街は、ユダヤ教・イスラム教・キリスト教の聖地であり、世界中から多くの巡礼者が集まる場所。
※イスラエルとパレスチナはエルサレムを首都としていますが、世界遺産としてのエルサレムはどこにも所属しておらず、世界遺産の申請もヨルダンによる申請。
■登録されている世界遺産
エルサレムの旧市街とその城壁群/1981年(ヨルダンによる申請)
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パレスチナ/5件
現在のパレスチナ国は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区から構成されています。2012年から国際連合総会オブザーバーとして承認されているため、現在のパレスチナの遺産に関しては「パレスチナの世界遺産」として登録。
■登録されている世界遺産
イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会(降誕教会)と巡礼路/2012年登録
オリーブとワインの地パレスチナ – エルサレム地方南部バティールの文化的景観/2014年登録
ヘブロン(アル=ハリール)旧市街/2017年登録
古代エリコ(イェリコ)/テル・アッスルターン/2023年登録
聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル/2024年登録
イラク/6件
アラビア半島の基部に広がるイラクは、ほとんどが砂漠地帯。ここは世界でも最古の文明の一つ、メソポタミア文明が栄えた地だけあって、人類の歴史のルーツともなる遺跡がたくさん。他にもバビロン庭園で有名なバビロンなども登録されています。
■登録されている世界遺産
ハトラ/1985年登録
アッシュール(カラト・シャルカト)/2003年登録
都市遺跡サーマッラー/2007年登録
アルビールの城塞/2014年登録
南イラクのアフワール:生物の避難所と古代メソポタミア都市景観の残影/2016年登録
バビロン/2019年登録
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イラン/28件
インドとトルコの間に位置するイラン。壮大な古代遺跡ペルセポリスや「世界の半分」と呼ばれるエスファハーンのイマーム広場などが世界遺産として有名ですね。中東でもトルコに次ぐ、指折りの世界遺産保有国でもあります。
■登録されている世界遺産
チョガ・ザンビール/1979年登録
ペルセポリス/1979年登録
エスファハーンのイマーム広場/1979年登録
タフテ・ソレイマーン/2003年登録
パサルガダエ/2004年登録
バムとその文化的景観/2004年登録
ソルターニーイェ/2005年登録
ベヒストゥン/2006年登録
イランのアルメニア人修道院建造物群/2008年登録
シューシュタルの歴史的水利施設/2009年登録
アルダビールのシャイフ・サフィーアッディーン廟の歴史的建造物/2010年登録
タブリーズの歴史的バザール施設/2010年登録
ペルシャ式庭園/2011年登録
エスファハーンのマスジェデ・ジャーメ/2012年登録
ゴンバデ・カーブース/2012年登録
ゴレスターン宮殿/2013年登録
シャフリ・ソフタ/2014年登録
メイマンドの文化的景観/2015年
登録スーサ/2015年登録
ルート砂漠/2016年登録
ペルシア式カナート/2016年登録
ヤズドの歴史都市/2017年登録
ファールス地方のサーサーン朝考古景観/2018年登録
ヒルカニアの森林群/2019年登録(アゼルバイジャンと共同)
イラン縦貫鉄道/2021年登録
フーラーマーン/ウラマナトの文化的景観/2021年登録
ペルシアのキャラバンサライ/2023年登録
ハグマターナ(エクバタナ)/2024年登録
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アラブ首長国連邦/1件
アラブ首長国連邦は、7つの首長国で構成されていて、UAEと呼ばれることが多い国。アラビア半島東部に位置し、ペルシャ湾に面した砂漠地帯がほとんど。石油と天然ガスのイメージが強いですが、世界遺産として登録されているのは1件のみ。
■登録されている世界遺産
アル・アインの文化的遺跡群(ハフィート、ヒーリー、ビダー・ビント・サウドとオアシス群)/2011年登録
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カタール/1件
カタールはアラビア半島の東に突き出たカタール半島に位置する首長国。ここは18世紀から半島内の部族によって交易が行われ、1940年代になると石油と天然ガスによる恩恵で経済大国となりました。世界遺産として登録されている物件は1件のみ。
■登録されている世界遺産
アル=ズバラの考古遺跡/2013年登録
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バーレーン/3件
バーレーンはアラビア半島の北東に浮かぶバーレーン島を中心とした島国。現在は石油関連で裕福な国家のイメージではありますが、古代にはディムルンという交易国家の中心地で、真珠の産地でもありました。
■登録されている世界遺産
バーレーン要塞-ディルムンの古代の港と首都/2005年登録
真珠採り、島の経済を物語るもの/2012年登録
ディルムンの墳墓群/2019年登録
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オマーン/5件
オマーンはアラビア半島の東端にある国で、全土が砂漠気候でほとんど河川がないという国土が広がっています。ここはかつて乳香の産地で、やがてパキスタンから東アフリカまでを支配した海上帝国「オマーン帝国」の中心地となったこともあり、歴史深い建造物などが点在。
■登録されている世界遺産
バハラ城塞/1987年登録
バット、アル=フトゥム、アル=アインの考古遺跡群/1988年登録
乳香の土地/2000年登録
オマーンの灌漑システム、アフラジ/2006年登録
カルハットの都市遺跡/22018年
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イエメンの世界遺産
イエメンは、アラビア半島南西部にある横長の国で、古代から東西交易で栄えてきました。世界遺産としては、首都サナアやシバーム、ザビードなどの交易都市が多く登録されていて、かつての繁栄が見られるのが特徴。
■登録されている世界遺産
シバームの旧城壁都市/1982年登録
サナア旧市街/1986年登録
古都ザビード/1993年登録
ソコトラ群島/2008年登録
マアリブの古代サバア王国記念建造物群/2023年登録
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世界遺産マニアの結論と感想
中東は西アジアから北アフリカまで幅広いだけあって、世界遺産の数も膨大。メソポタミア文明やエジプト文明など、人類の起源に迫る遺跡や、各宗教の聖地であるエルサレムなど、世界史でもおなじみのスポットが多く見られるのが魅力です。ぜひディープに楽しんでみてくださいね!
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。