ブルガリアはバルカン半島でも南東部に位置していて、トルコとの国境に面した国。そのため、ヨーロッパとアジアの文化が交わる場所でもありました。山奥にある巡礼地・リラの僧院や独自の文化が見られるトラキア人の墳墓など、さまざまな遺産がありますが、世界遺産はいくつあるでしょうか?
ここでは、ブルガリアの世界遺産を世界遺産マニアが一覧にして分かりやすく解説。それぞれの遺産を簡潔に解説していきましょう。
目次
ボヤナ教会
首都ソフィアの南に位置するボヤナ地区に位置するブルガリア正教会の教会堂。ここはブルガリア帝国時代には王侯貴族の別荘地として利用されていて、ボヤナ教会は王家の礼拝堂として建造されたもの。
3つの建物で構成され、内部には貴重なフレスコ画が描かれています。13世紀のブルガリア帝国時代に建造された中央棟のフレスコ画は、東欧の中世のキリスト美術で最も完成度の高いものの一つ。
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マダラの騎士像
ブルガリア北東部の大都市シュメンから東へ約20km。マダラ高原には高さ100mある断崖に刻まれた騎馬のレリーフがあることで有名。レリーフは、高さ23mの位置に縦2.5m、横2mにも渡って削られた巨大な騎士の像で、犬を従えた騎馬が馬にライオンを踏みつけているというデザイン。
これは8〜9世紀に建造された第1次ブルガリア帝国時代(681〜1018年)のもの。ブルガリア帝国のハーン(君主)であり、英雄であるテルヴェルがモチーフにされているという説が有力。
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カザンラクのトラキア人の墳墓
トラキア人とは、かつてバルカン半島南東部に住んでいた、インド・ヨーロッパ語族に属する民族で、独自の文化を持っていました。
ブルガリア中央部、バラ祭りで有名なカザンラクの郊外には、紀元前4世紀頃に築かれたトラキア人の地下墳墓が存在します。色鮮やかで美しい天井画が残っていて、資料が少ないトラキア人の埋葬の儀式や文化が分かるというもの。
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イヴァノヴォの岩窟教会群
ルーマニアとの国境にある都市・ルセから南へ約24kmの位置にあるイヴァノヴォ。ここは13世紀ころから修道士によって断崖などを削って岩窟を造り出し、教会が築かれてきました。
ほとんどの岩窟は風化や天災によって崩壊し、現在フレスコ画が残る教会は5箇所のみ。岩窟教会の内部には当時の首都であるタルノヴォで流行したタルノヴォ派のフレスコ画が残っていて、中世ブルガリアの成熟した文化が今でも見られます。
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ネセバルの古代都市
ブルガリア東部ブルガス州の北東に位置するネセバルは、黒海で有名なリゾート地。世界遺産に登録されている歴史都市は、岬の先端部分で、ここはかつては島でしたが、後世になると人工の通路が築かれ、半島になりました。
紀元前6世紀ころにはギリシャの植民地になり、交易の拠点となると、やがてビザンツ帝国(東ローマ帝国)によって支配されます。ここにはヘレニズム期の神殿やビザンツ様式の教会など、黒海において重要な都市であったことを示す建築物が点在。
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リラ修道院
リラは、ブルガリア南西部のリラ山脈に位置する小さな町。この町から20kmほど離れた場所に修道院があり、多くの巡礼者が集まっています。
ここはリラのイオアンによって10世紀に設立されました。やがて修道院は巡礼者が多く訪れるようになり、19世紀に火事でフレリョの塔以外はほぼ燃えてしまいますが、すぐに再建。この修道院そのものがブルガリア人のアイデンティティとなっている点が評価されています。
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スレバルナ自然保護区
自然保護区はルーマニアの国境近くのシリストラ州にあり、ドナウ川沿岸のスレバルナ村の東側に広がるスレバルナ湖と湿地帯を含めた6平方kmもの敷地が世界遺産に登録。スレバルナ湖の名前の由来は、湖面が銀色に見えることから「銀の湖」という説が有名ですが、他にも人名が由来とする説もあったりとさまざま。
ここは約180種類の鳥類の繁殖地であり、ブルガリアに生息するほぼすべての鳥類が見られる地。敷地内には、絶滅が危惧されているニシハイイロペリカンも見られます。
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ピリン国立公園
ブルガリア南西部のブラゴエヴグラト州に位置するピリン山脈。ここはヴィクレン山(標高2915m)を含む、標高1008〜2915mもの山々が連なる高山地帯で、約27平方kmもの広大な敷地が登録されています。ここはブルガリアでも最大の自然公園で、70を超える氷河湖や滝、洞窟という多様な景観が見られるのが特徴。
ここで見られる植物はブルガリアの植物の約3分の1に相当するというほど。中には樹齢1300年を超えると推定されている「バイクシェフの松」という巨大なボスニアマツの木も見られます。
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スヴェシュタリのトラキア人の墳墓
ブルガリア北東部のラズグラト州は青銅器時代から人が暮らしていたとされ、古代ギリシャ時代にはトラキア人という先住民族が暮らしていました。スヴェシュタリ村の近くには、1982年にトラキア人の王と王妃を埋葬した墳墓が発見。
王と王妃の遺体があった玄室には、10体の女性立像が並ぶカリアティードに王と戦士、女神が描かれた天井画があり、これはトラキア人の文化とギリシャ風のヘレニズム文化の融合が見られるもの。
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カルパティア山脈とヨーロッパ各地の古代及び原生ブナ林(他ヨーロッパ17ヶ国と共同)
ヨーロッパブナは、北はスウェーデン南部から南は地中海岸、西はポルトガル、東はトルコまで広がっていて、氷河期後期には、ヨーロッパの約40%はヨーロッパブナ(ファグス・シルヴァティカ)の林が広がっていました。登録エリア各地にはブナの原生林が広がっていて、ヨーロッパブナの原生林としては世界最大の規模を誇ります。
ブルガリアとしての登録範囲は、バルカン山脈にある中央バルカン国立公園内の9箇所が含まれています。
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世界遺産マニアの結論と感想
ブルガリアの世界遺産としては9件ではありますが、構成資産として数えると10件も登録されています。ギリシャ時代に暮らしていたトラキア人の墳墓からブルガリア人の精神支柱であるリラの僧院まで幅広いジャンルの遺産があるのが魅力です!ぜひディープに楽しんでくださいね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。