ブラジルの世界遺産の数は合計で24件。世界最大の水量を誇る滝・イグアスの滝やリオデジャネイロのキリスト像など…誰もが知る観光地はもちろん世界遺産でありますが、それ以外はどんな世界遺産があるのでしょうか?
ここでは、ブラジルの世界遺産を世界遺産マニアが一覧にして分かりやすく解説。それぞれの遺産を簡潔に解説していきましょう。
目次
古都オウロ・プレット/1980年登録
ブラジル南東部のミナスジェライス州にあるオウロ・プレットは、かつてはヴィラ・リカ(「豊かな谷」という意味)と呼ばれた都市。ここは17世紀末に金鉱脈が発見されると、18世紀のゴールドラッシュ時は世界の金の60%が発掘されたものの、19世紀に金が枯渇すると衰退しました。
ここには当時建造されたバロック様式の教会、橋、噴水などが残り、中でも彫刻家アレイジャジーニョによる傑作であり、黄金が400gも使用された「ノッサ・セニョーラ・ド・ピラール教会堂」があることで有名。
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オリンダ歴史地区/1982年登録
ブラジル東部のペルナンブーコ州にあるオリンダは、1535年にポルトガル軍人であったコエリョ・ペレイラが、高台から眺めて「Oh!Linda!(なんて美しい)」と叫んだとされ、彼が街の創始者になりました。
オランダによって破壊されたものの、17〜18世紀に再建され、砂糖産業で栄えました。街には当時建造されたバロック様式の聖堂や修道院などが現在も残っています。
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グアラニーのイエズス会伝道所群/1983年登録(1984年拡大)(アルゼンチンと共同)
ブラジルとアルゼンチンの国境沿いの密林には、17〜18世紀にかけてヨーロッパから先住民のグアラニー族へキリスト教の伝道にやってきたイエズス会による伝道所(レドゥクシオン)があります。
ブラジル南部のリオグランデ・ド・スル州にあるイエズス会の伝道所跡は、1983年に「サン・ミゲル・ダス・ミソンイスの遺跡群」として登録されました。
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サルヴァドール・デ・バイーア歴史地区/1985年登録
サルヴァドール・デ・バイーアは、ブラジル北東部にある湾口都市。16世紀初頭の諸聖人の日に発見されたことからこの地は「諸聖人の湾」と名付けられ、1549年に植民都市とする時に「サルヴァドール(救世主)」という名になりました。そして、ポルトガル領ブラジルの首都になり、1763年にリオデジャネイロに移転するまで200年以上も首都であり続けました。
サトウキビ産業で栄えたこの町は、カラフルなルネサンス様式の建築物が多く作られ、現在でも当時の姿を残しています。
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ボン・ジェズス・ド・コンゴーニャスの聖所/1985年登録
ブラジル南東部のミナスジェライス州にある古い街コンゴーニャス。ここは金鉱で栄えた街で、18世紀後半になるとボン・ジェズス・デ・マトジーニョス聖堂というバシリカ式の教会堂を中心とした聖域が建造されました。
ここはブラジルのバロック建築家アレイジャジーニョによる彫像が並び、聖堂の前にある旧約聖書の預言者像は彼の最高傑作の一つ。
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イグアス国立公園(ブラジル側)/1986年登録
アルゼンチンとブラジルの国境に位置するイグアス川。ここには全体の幅が2700m以上、最大の高さは80mで世界最大の水量を誇る滝、イグアスの滝があることで有名です。
滝はほとんどがアルゼンチン領となっており、上流がアルゼンチン側で下流がブラジル側。それぞれ「イグアス国立公園」としており、登録面積はブラジルのほうが広大です。1986年に登録されたブラジルの「イグアス国立公園」は約1700平方kmの広さになるもの。
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ブラジリア/1987年登録
ブラジル中西部にあるブラジル高原の未開の地に築かれた計画都市。ここは20世紀に築かれた近代都市の代表でもあります。
ブラジリアは都市計画家ルシオ・コスタと建築家オスカー・ニーマイヤーによって設計され、まるで飛行機のようなレイアウトの中にモダニズム建築が多く並ぶという革新的な都市デザインです。
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セラ・ダ・カピバラ国立公園/1991年登録
ブラジル北東部のピアウイ州に位置する国立公園で、約1291平方kmに及ぶ広大な面積が登録されています。ここはカーチンガと呼ばれる熱帯半乾燥気候に分布する有刺灌木林(トゲがある木々)が広がる地で、5〜12月の乾季は木々が枯木になるという場所。
ここには2万5000年以上前の先史時代の洞窟壁画が多く点在し、その数は世界でも最大規模。そして、南アメリカでも最も古い人類の定住地であるとされています。
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サン・ルイス歴史地区/1997年登録
マラニョン州の州都であるサン・ルイスは、3つの川によって形成された三角州であるサン・ルイス島を中心とした都市。ここは17世紀にフランス人によって要塞が設立され、サン・ルイスという名は、フランス王であり、聖人であったルイ9世と当時の王・ルイ13世にちなんで命名されたもの。
やがてポルトガル領となり、砂糖と綿花の貿易港として発展します。今でも富を得たポルトガル人農園経営者によって建造された歴史的建造物が多く残っているのが特徴。
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ディアマンティーナ歴史地区/1999年登録
ブラジルの南東部・ミナスジェライス州にあるディアマンティーナは、18世紀に標高約1100mの高地に建造されたポルトガルの植民都市。ここはポルトガル語で「ダイヤモンド」を示すだけあって、1720年代にダイヤモンドの鉱脈が発見され、採掘者が入植し、標高150mもの高低差がある渓谷に沿って現在の歴史地区が建造されました。
ここはポルトガルの石畳の町並みをモデルにしていて、バロック様式の建造物が並び、特に聖フランスシス教会はヨーロッパと先住民の文化が交差した建築様式が見られます。
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コスタ・ド・デスコブリメントの大西洋岸森林保護区群/1999年登録
コスタ・ド・デスコブリメント(ディスカバリー・コースト)の登録範囲は、ブラジル北東部のバイア州とエスピリト・サント州にまたがっていて、ここはポルトガル人が初めてブラジルに上陸した地であるモンテ・パスコアル国立公園を含めた8つの保護区で構成。
総面積1120平方kmを越える多雨地帯であり、パウ・ブラジル(ブラジルボク)など、固有種を含めた貴重な樹木が見られます。
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大西洋岸森林南東部の保護区群/1999年登録
世界遺産としては、ブラジル南東部のパラナ州とサンパウロ州にまたがり、25もの保護区、合計で約4700平方kmもの敷地が登録。16世紀以降は開発のため、森林は徐々に減っていき、現在はこの地に広がる森林が大西洋岸で最も保存状態の良いものとなりました。
ここは大西洋岸の森林に住む生物の進化が分かる地で、山岳地帯、湿地帯、島々などには、貴重種のジャガーを含めた多くの動植物が見られます。
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中央アマゾン保全地域群/2000年登録
ブラジルの北西部にある中央アマゾン保全地域群は、アマゾン盆地最大の保護区。ジャウー川は、水の色が黒く見えることから「黒い川」と呼ばれ、沿岸は定期的に浸水することから、ここはバルゼア(浸水林)やイガポー(泥炭湿地林)、湖沼も多く点在します。
そして、絶滅危惧種のアマゾンマナティーやアマゾンカワイルカなどが生息する、世界でも豊かな生態系が見られる場所の一つ。
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パンタナル自然保全地域/2000年登録
「パンタナル」とは、ポルトガル語で「沼地」という意味で、パンタナル湿原は、南アメリカ大陸のほぼ中央に位置する湿原。ブラジル西部マットグロッソ州とマットグロッソ・ド・スル州にまたがり、一部はボリビアとパラグアイにまたがっています。
南米の主要河川であるクイアバ川とパラグアイ川の源流がここにあり、水鳥の生息地であるなど、多様な生態系が見られるが特徴です。
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ゴイアス歴史地区/2001年登録
ゴイアスはブラジル中部・ゴイアス州の南部にあり、かつては州都であった場所。ここはもともとブラジル中央部の開拓を目的にポルトガル人が訪れ、18世紀前半に金鉱脈が発見されたために建造された鉱山都市です。
金鉱脈は18世後半に枯渇してしまったのですが、サンタナ大聖堂など南米風のコロニアル様式の鉱山都市の様子は今もそのまま残っています。
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セラード保護地域:ヴェアデイロス平原国立公園とエマス国立公園/2001年登録
世界遺産としては、ブラジル中央部のゴイアス州にあるヴェアデイロス平原国立公園、そして、マットグロッソ・ド・スル州に位置するエマス国立公園の2つが登録されていて、総面積だと3000平方kmを超える広大な遺産でもあります。ここは世界でも古い岩石形成地帯の一つで「地球最古の平原」とされているほど。
ここは何千年もの間、気候が変動する時期でも動植物が生息し続け、世界でも稀に見る独自の生態系が見られる地でもあります。
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ブラジルの大西洋上の島々:フェルナンド・デ・ノローニャ諸島とロカス環礁の保護区群/2001年登録
ブラジル本土から約340kmの距離にある「フェルナンド・デ・ノローニャ国立海洋公園」は、海底山脈の頂上部にあるフェルナンド・デ・ノローニャ島を中心に約21の群島と小島、周辺約100平方kmもの広大な敷地で構成。
最大の島フェルナンド・デ・ノローニャを中心とする島々は、イルカが非常に密集して生息していることで有名で、ロカス環礁はラグーンが多くあり、干潮時は美しい景観が見られます。
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サン・クリストヴァンの町のサン・フランシスコ広場/2010年登録
ブラジルのセルジペ州のサン・クリストヴァンは、かつては州都であった街。16世紀後半に、スペイン・ブラジル同君連合時代のハプスブルク家によって設立され、現在の街並みは17世紀以降に作られたもの。
ここはスペインとポルトガルそれぞれの都市設計が取り入れられ、広場にはフランシスコ会の修道院や教会、私邸などが並び、街が設立されて以降の歴史が凝縮して見られるというのが特徴。
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リオデジャネイロ:山と海との間のカリオカの景観群/2012年登録
ブラジル南東部にあるリオデジャネイロ州の州都。リオデジャネイロは、大西洋に面しており、グアナバラ湾沿いに広がる平野と森林に囲まれた山々に囲まれた都市です。コルコバードの丘のキリスト像を含むチジュカ国立公園の山々とコパカバーナ湾などの海岸などが織りなす独特の景観が特徴。
「カリオカ」とは、リオデジャネイロの市民や出身者を表す言葉。リオデジャネイロの町並みは、ミュージシャンや芸術家、音楽家などにインスピレーションを与え、文化にも影響を与えています。
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パンプーリャの近代建築群/2016年登録
ブラジルの南東部にあるミナスジェライス州の州都べオリゾンテ。ここは標高約800mの高原地帯に建造され、1940年代に人造湖パンプリーリャ湖一帯は庭園都市(庭園の環境がある都市)として設計され、世界遺産としてはその時期に建造された4つの建造物が登録。
ここは首都ブラジリアを設計したオスカー・ニーマイヤーが先鋭的な芸術家とともに設計し、教会や美術館、文化施設など、建築と彫刻、絵画などを融合させたコンクリートの建造物で、ブラジルの気候や自然環境に合わせた近代建築が見られます。
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ヴァロンゴ埠頭の考古遺跡/2017年登録
リオデジャネイロのセントロ地区北部にあるジョルナル・ド・コメルシオ広場。現在は埋め立てられてしまいましたが、ここは以前リオの港であった場所で、地下にはヴァロンゴ埠頭という当時の石造りの埠頭が残っています。
埠頭は90万ものアフリカ人奴隷が通ってきた場所とされ、最下層のペ・デ・モレク様式が本来の埠頭の姿であると考えられています。
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パラチーとイーリャ・グランジの文化と生物多様性/2019年登録
パラチーはリオデジャネイロ州南西部に位置する湾港都市で、この周囲にはイーリャ・グレンジ(グランジ島)を含めた5つの保護区や国立公園があり、合わせて複合遺産として登録。
近くで鉱山が発見されると、パラチーは17世紀後半にカミーニョ・ド・オウロ(黄金の道)の終着地となり、労働者として送られてきたアフリカ系黒人奴隷の入口ともなった場所。歴史地区は18世紀〜19世紀初頭の植民地時代の建造物が多く残っています。
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ロバート・ブール・マルクス記念遺産/2021年登録
リオデジャネイロの西部に位置する、バラ・デ・グアラティバ地区には、マングローブと原生林に囲まれた庭園があります。ここは造園家であり、芸術家でもあったロバート・ブール・マルクスによって40年以上に渡って作られたもの。
ここは3500種以上の熱帯植物が植えられていて、広大な敷地には曲線をモチーフにしたモダニズム建築などもあり、近代の造園様式の発展が見られます。
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レンソイス・マラニャンセス国立公園
ブラジル北東部に位置するマラニャン州。レンソイス・マラニャンセス国立公園とは、「マラニャンセス(マラニャン州の)」「レンソイス(シーツ)」という意味で、シーツのように白い砂丘が波打つように見えることで知られます。
雨季の終わりになると無数の湖が出現し、そこには魚が暮らすという不思議な現象が見られることでも有名。公園内には絶滅危惧種も暮らしていて、湖にはここでしか見られない独特の海綿動物が生息しているというのも特徴です。
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世界遺産マニアの結論と感想
ブラジルの世界遺産は文化遺産が15件、自然遺産が7件、複合遺産1件と、南米大陸の大部分を占めるだけあって、アマゾン川やイグアスの滝など、迫力のある自然遺産がいっぱい!それだけなく、意外にもポルトガル支配下に築かれた歴史地区も多く世界遺産に登録されているので、ぜひディープに楽しんでみてくださいね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。